間違っていないはずの日本語、なぜ日本人のお客さんは嫌な顔をしたのか―中国人学生

日本僑報社    2018年6月11日(月) 8時0分

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外国語を学ぶ人にとって、通訳や翻訳は目指す仕事の最高峰と言えるかもしれない。しかし、青島大学の呂暁晨さんは通訳のアルバイトを通じて、「語学力」以外の重要性を認識したという。資料写真。

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外国語を使う仕事として真っ先に思いつくのが通訳や翻訳だろう。いずれも、高い語学力が求められる。しかし、青島大学の呂暁晨さんは、通訳のアルバイトを通じて「語学力」以外の重要性を認識したという。以下は呂さんの作文。

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「日本語を勉強して、何をしたいのですか」。私が日本語を勉強していることを知り、よく聞かれる質問の一つです。正直、私もよくわからないけど、いつも「通訳かな」と曖昧に答え、すぐ話を変えていました。なぜかというと、外国語を勉強してできる仕事は、「通訳」だろうと思うし、それしか思いつかないから。まあ、なんといっても、通訳と言う響きも良くてカッコよく思えます。でも本当の事は何もわかっていません。そして、試練がやってきました。

先日、大学の主催する会議があり、日本からのお客さんが来られました。日本語を勉強しているし、通訳希望と言っていたので、私が通訳を務めることになりました。随行通訳ですので、常にお客さんと一緒に行動することが多かったのです。ホテルのチェックインや、会場やレストランへの誘導など、難しい内容はあまりなく、自分でも上手に通訳できたと思っていました。しかし、時々お客さんに変な顔をされます。その顔を見ると不安や嫌な気持ちにもなりますが、この通訳で日本語にも自信を持てるようになりました。

そんな事を思っていた休憩時間に、同じく会場で会議通訳を担当している先生に呼ばれました。「そういえば、呂さんって、卒業したら通訳になりたいと言いましたよね」。どうしてこんな時にと不思議に思いました。「はい。そうです」と答えると先生は、「呂さんの使った日本語はどれも文法的には正しいけど、相手の気持ちをあまり考えていないようですね。さっき、会議が終わった後、呂さんがお客さんに『これから、休憩してください』と言って、まず自分が先に席を離れたでしょう。お客さんに命令している感じだし、面倒くさそうに早く会場から離れたい気持ちが見え見えでしたよ。このことは仕事では重要だからね」と言われたのです。

先生は別に怒っている顔はしていなかったですが、その言葉は重かったのです。時々お客さんに変な顔をされたのは、私の下手な日本語にではなく、私の適当な仕事ぶりだったことがやっとわかりました。

その後の通訳では、私はできるだけ勉強した尊敬語や謙譲語を使って話し、先生を見習って、身振りなども使いお客様が理解しやすいように通訳をしてみました。担当するお客さんは徐々に笑顔を見せてくれるようになって、最後お別れの時、「呂さん、いろいろ気を遣っていただき、ありがとう」と言ってくれました。その言葉を聞いて本当に嬉しかったですし、通訳とは単に言葉を訳すだけではなく、相手の心も訳す必要があると分かったのです。この会議がきっかけで、「なんとなく将来は通訳になりたい」から、「絶対に通訳になりたい」と思うようになったのです。言葉の力って本当に不思議なものだと気がつきました。

同じ意味をそのまま日本語に直訳するのと、丁寧に日本語らしく訳すのと、まったく聞き手に違うイメージを与えます。それに、丁寧な言い方を通して、聞き手に気を遣っていることをきちんと伝えられるなんて、日本語ならではの魅力でしょうか。このことを気づかせてくださったのは、先生です。適切な時期に、私の気持ちや考えを分かって注意してくれた先生は、日本式の注意方法だったのかもしれません。今更になるかもしれませんが、日本語って本当に奥ゆかしいものです。

これからも、先生のもとで、もっと日本語を勉強していきたいですし、相手の事を考えられる通訳になりたいと思っています。(編集/北田

※本文は、第十三回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「日本人に伝えたい中国の新しい魅力」(段躍中編、日本僑報社、2017年)より、呂暁晨さん(青島大学)の作品「忘れられない日本語教師の教え」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

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