<在日中国人のブログ>中国の報道にあって、日本の報道に欠けているもの

黄 文葦    2018年5月17日(木) 6時10分

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今年のゴールデンウイークに私が香港へ行った際、ホテルでよく香港のフェニックステレビ(鳳凰衛視)を見ていた。私が好きなテレビ局である。内容と表現力が豊かで、アバンギャルドである。写真は中国の取材。

今年のゴールデンウイークに私が香港へ行った際、ホテルでよく香港のフェニックステレビ(鳳凰衛視)を見ていた。私が好きなテレビ局である。内容と表現力が豊かで、アバンギャルドである。

そして、日本のテレビ番組と比べて明らかに違う点を見つけた。まず、フェニックステレビでは情報番組が多く、対談形式の番組を多く扱い、ニュースキャスターが鋭い観点を持って、ニュースを伝えている。

日本のテレビにはバラエティー番組が多く、情報番組の中でも大勢の芸能人が笑いながらコメントを言い合う。情報を伝えるより、番組を盛り上げるのが目的のようだ。実際の日本人の多くが静かなのに対し、テレビの中の芸能人が居酒屋のような雰囲気を作り上げているのはなぜだろうか。

そう言えば、日本のテレビには芸能人のコメンテーターが多い。どんな分野のことでも芸能人の意見を求める。中国のテレビ局でも香港のテレビ局でも、芸能人がコメンテーターになるのは極めて少ない。

さらに、フェニックステレビは国際報道が豊富で、世界各地で現地記者を採用し、中国語が上手ではなくても、記者たちが現場でマイクを握って生々しく最前線の報道を懸命に伝える。つまり、世界各地の「今」が伝えられている。

日本のテレビに関する国際ニュースの伝え方と言えば、あくまでも日本と関係ある情報を優先している。例えば、世界的な分野別のランキングの中で、日本の順位はどうなっているのか、ということがよく報道されている。また、海外で事件が起きた際は、日本人が巻き込まれていうるかどうか、「乗客に日本人はいませんでした」と、日本人の安否に関する情報を冒頭で伝えることが多い。

4年前に南シナ海の上空で、乗員乗客239人を乗せた「マレーシア航空370便」が姿を消した事故があった。当時、日本では「乗客に日本人はいませんでした」程度の情報しか伝えない報道が目立った。この報道の仕方から、テレビ局などマスコミから露呈された「無関心さ」は明らかであった。マレーシア、中国、ベトナム、アメリカなど関係国に駐在している日本の記者たちが、このように重大な事故を伝える姿は見られなかった。

1998年、歌手の中島みゆきさんが「4.2.3.」という歌を歌った。この曲は、1997年のペルー日本国大使公邸占拠事件をモチーフとしている。以下は歌詞の一部である。

「この国は危い 何度でも同じあやまちを繰り返すだろう 平和を望むといいながらも日本と名の付いていないものにならばいくらだって冷たくなれるのだろう」

1996年12月、在ペルー日本大使公邸占拠事件が発生。多数の日本人が人質となった。そして事件は年を越え1997年4月22日、時のフジモリ大統領の指示で突撃したペルーの兵士により鎮圧された。テロ組織のメンバーは全員射殺。日本人は全員無事であることをテレビ局生中継でレポーターは叫んでいた。

「4.2.3.」という歌、現在でも日本と世界の繋がり方について啓示する意味がある。自国民さえ無事なら、他の国の人などどうでもいい。日本だけ良ければ良い。日本だけ美しさを保てれば良い。世界中に何かあっても、日本に損がなければ良い。そういう考え方はすでに時代に遅れているのではないか。海も空も簡単に超える世の中になっている。

テレビ局の国際報道の話に戻る。狭い土地である香港にあるフェニックステレビはグローバルな視点で国際報道をしている。中国のテレビ局でも国際報道チャンネルを設け「外向き」の姿勢を示している。日本のテレビ番組が海外取材に出ても、主に海外で暮らす日本人を探す。つまり、「内向き」の報道スタイルである。あえて言えば、日本では報道は自由だけど、国際的な視野が欠けている。

余談だが、今、朝鮮半島問題の中、日本の立場が微妙である。蚊帳の外に置かれることを否定しても、韓国を通して北朝鮮の意思が伝えられてきたのは事実であった。

4月27日の南北首脳会談で、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長に日本人の拉致問題を提起した際、金委員長が「なぜ、日本は直接言ってこないのか」と語っていたという。日本は言いたくないのではなく、言えないのだろう。広い視野の国際報道が求められると共に、政治・外交でも島国根性を超える度胸を見せる時代がやってきたのかもしれない。

■筆者プロフィール:黄 文葦

在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

■筆者プロフィール:黄 文葦

在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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