11月北京APEC会議で初の安倍・習会談実現へ!経済発展と軍事衝突回避を日中が最優先―米国も強く要求

八牧浩行    2014年6月30日(月) 7時30分

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11月に北京で予定されているAPEC首脳会議で安倍晋三首相と習近平国家主席の初の会談が実現する可能性が高まっている。外交・経済依存関係の強化を通じて不測の軍事衝突を避けるのが狙い。資料写真。

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中国にとって今年最大の国際政治イベントは11月に北京で予定されているアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議。オバマ米大統領、プーチン露大統領、安倍晋三首相をはじめ世界の有力首脳が集まり、習近平国家主席がホストとなる。昨年3月の主席就任以来正式な会談を行っていない主要国トップは安倍首相だけ。尖閣諸島をめぐる対立や安倍首相の靖国神社参拝などもあり、日中首脳会談は実現していないが、日中両国ともこの会議での首脳会談を目標に動き出した。どの国でも最大の安全保障は外交・経済依存関係の維持強化である。一刻も早く首脳会談を開催して信頼関係を醸成し、突発的な軍事衝突を避けなければならない。

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太田国土交通相は6月27日、北京で中国の劉延東副首相と会談し、日中関係の改善が必要との認識で一致した。会談では、太田国交相が「日中関係は厳しい状況にあるからこそ交流が大事」と述べ、劉副首相も「両国に友好的な民意をつくっていくことが重要」と強調した。第2次安倍内閣の閣僚が、中国の副首相レベルの指導者と会談するのは初めて。中国側は太田国交相の訪中を重視しており、冷え込んだ日中関係改善に向けたサインとみられる。

これに先立つ23日、中国共産党の王家瑞・中央対外連絡部長が吉田忠智・社民党代表に対し、APEC首脳会議の際の日中首脳会談について「中国としても歩み寄りの雰囲気をつくりたい。双方が努力して会談を行おうという雰囲気が大事だ」と意欲を示したという。APEC首脳会議まであと5カ月。強硬一辺倒だった中国が日本との対立の緩和を模索し始めたと日中外交筋は見ている。王氏は各国との政党間外交を仕切る立場にあり、発言は最高指導部の意向を反映しているとみられる。

◆「外交・経済」が最大の安保対策に

日本の集団的自衛権を容認する閣議決定が7月1日に行われる見通しとなったが、安全保障には軍事力よりも外交力や経済相互依存が大きく作用することを忘れてはならない。このような外交・経済面での多様な取り組みが必要だ。

最近、「中国の海洋進出を念頭に防衛力を強化する」というフレーズが日本政府高官やメディアで多用されるが、ただ軍事的に張り合うだけでは東アジアの緊迫化は高まる一方となる。安倍政権は中国との緊張状態を奇貨として集団的自衛権容認など国家主義的な政策を推進しているように見えるが、まず日中首脳が実際に会って緊張をほぐすことが急務だ。

世界の成長センターである東アジアで経済の相互依存を深めることこそが軍事衝突を防ぐ最大の抑止力になる。2度の世界大戦の教訓から生まれた共通経済市場であるEU(欧州連合)諸国の間では、「戦争が起きると考えている国民はいない」(仏外交筋)という。

米中が冷戦時代のかつての米ソのように鋭く対立しないのは両国に経済相互依存が存在するためである。日本と中国との間には国交正常化以来の緊密な相互経済関係がある。浙江省や上海市など経済発展が目覚ましい地方政府のトップを経験し、日本企業関係者との親交が深い習主席の本音は日本との共存共栄に持ち込むこと。昨年10月24日に開催された「周辺外交工作座談会」で、中共中央政治局常務委員ら多数の幹部を前に、「対日関係は改善すべきだ。日中の経済交流と民間交流を強化せよ」と発言している。

TPPRCEPを繋ぐ絶好のポジション生かせ

アジア太平洋の経済相互依存で、日本は絶好のポジションにいる。米国主導の環太平洋経済連携協定(TPP)と中国、韓国、東南アジアが加わる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)をともに推進し結合させればこの地域の繁栄と安全に繋げられる。日本が経済の相互依存よりも単純な軍事的安保優先に傾斜すれば、世界の成長センター、アジア太平洋の繁栄を損ない、アベノミクスの足を引っ張ることにもなる。

戦後、敗戦国である日本とドイツが経済大国に発展したのは「軍事より経済」を優先させたためであり、この平和民生重視路線を堅持すべきだ。日本の財政は先進国最悪であり、経済の実態を踏まえず軍事に傾斜した国が破綻するのは歴史が証明している。安全保障は軍事力だけではなく、外交・経済・文化交流などによって確保される。

日本が第2次世界大戦時に国力に比して過大な軍事力を保有した結果、320万人もの犠牲者を生み、歴史上最悪の惨禍を招いた教訓を忘れてはならない。世界の軍事当局は、仮想敵国を定めて装備を要求、予算・人員獲得のためにその脅威を大げさに宣伝する傾向にあるのは要注意。相手側もそれに対抗するから軍拡競争に陥りやすい。

その意味で、6月下旬から約1か月間にわたって展開されている、米ハワイを舞台にした米海軍主催の多国間軍事演習「環太平洋合同演習(リムパック)」は有用だ。各国軍隊が協力し合うもので、「仮想敵国」のないアジア太平洋地域を実現することが可能となる。これに中国が初参加し、艦船4隻が合同演習している。米外交筋によると、米オバマ政権は日中首脳会談の早期実現を強く要求している。

APECは21の国と地域が参加する経済協力の枠組みで、経済規模で世界全体のGDPの約5割、世界全体の貿易量及び世界人口の約4割を占める。11月の北京APEC首脳会議での日米首脳会議により、平和友好、経済相互発展の実が上がることを望みたい。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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