<驚くべきインバウンド後進国ニッポン(12)>役所と業界の対立のはざまで、日本の訪日政策を憂う!

Record China    2014年6月14日(土) 14時40分

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数年前に通訳案内士制度の在り方検討会が観光庁で開かれ、この制度を廃止するか継続するかの議論が交わされました。写真は長野県諏訪湖で早朝散歩を楽しむ訪日客(南方からなので服装がバラバラです)。2枚目は京都市西陣織会館での着物ショーの写真を撮るインバウンド客。

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数年前に役所と民間の対立を象徴するような事件がありました。通訳案内士制度の在り方検討会が観光庁で開かれ、この制度を廃止するか継続するかの議論が交わされました。通訳案内士からは大規模団体代表2名、あと10数名は関連業界から出席しましたが、関連業界からは成果を上げられない通訳ガイド制度の廃止、業務独占の剥奪等の辛辣な意見も続出したように記憶しております。多くのベテラン通訳案内士が制度廃止による廃業を心配し、制度廃止時は訴訟を起こすと息巻いていた年配の方もおられました。結局数年の検討の結果、観光庁は通訳案内士制度を保持するとの見解を通訳案内士団体側に出すのと同時に、役所原案に沿って、通訳案内士団体に黙って「総合特区法案」の中に総合特区通訳案内士案を盛り込んで成立させました。

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その結果、総合特区では通訳案内士試験なしで通訳案内士業務が可能になり、特区自治体の主催する講習を受けるだけで業務ができるようになったのです。これは中国から九州への豪華客船就航のための観光対策で九州の目玉政策でした。一方では難しい試験を課し、一方では試験なしの講習だけで同じ資格が取れるという、非常におかしい話です。加えて特に日本人のガイドからは、立場の弱い日本人の権利を取り上げて外国人に無条件で渡すという当時の過激系マスコミ論調を受けて、売国的外国人優遇政策であると非難していた人もおりました。

当局曰く、プロの通訳ガイドの数が九州には足らないので在日の外国人留学生の活用を目的に導入されたものだそうですが、今も全国各地で一部自治体下部団体やボランティア団体等が新たに利用しようと考えています。法案設立後ある大手旅行会社が某地区の総合特区通訳案内士の講習を募集しましたが、なかなか人集めに苦労していたようです。それは外国人在留資格者が総合特区の通訳案内士を取っても、それだけで生活は絶対できないからです。この法案自体が在留資格を持つ外国人向けの法案であることを鑑みると、その存在意義は疑問視されます。

現在、日本国内では訪日団体には通訳ガイドは必須ではありません。添乗員が一人でやってしまうか、無料の闇ガイド(物売り専門ガイド)が付く場合がほとんどなのです。添乗員さんには日本の旅程資格やガイド免許を持ってなくてもできる仕組みになっております。ところが中国でも欧州でも外国人がその国の通訳ガイドをすることは禁じております。多くの国がガイドに国籍制限を設けているのです。このような寛容な仕組みは極めて珍しい状態です。きわめて不適切と言わざるを得ない方法です。中国も外国人ガイドを禁止しており、従って私は中国ではガイドをすることができません。最近、中連協(中華人民共和国訪日観光客受入旅行会社連絡協議会)の帰国報告書に通訳ガイド名を書く欄ができました。これによってびびっている海外の旅行会社もあるのですが、理想はやはり日本の通訳ガイドがすべての団体に付く事でしょう。これには時間がかなりかかると思いますが、地道に努力すべきだと思います。

◆筆者プロフィール:水谷 浩(仁宣)

中国語通訳案内士会・副代表幹事。現役通訳案内士(中国語)の他、産業・医療通訳等各種通訳、講演と執筆、訪日外客コンサルとビジネスマッチング(日本と海外)を展開する。銀聯カード決済関連会社のサイトで、中国・中華市場向け中国語旅行ブログ“中日導游游日記”を長期連載している。

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