<真相!日米首脳会談>オバマ大統領に「尖閣現状維持」と「対中関係改善」を約束させられた安倍首相

八牧浩行    2014年4月30日(水) 6時10分

拡大

24日の日米首脳会談のもう一方の主役は中国だった。振り返って見れば、冷え込んだ日中関係が、米国の仲介により融和に向け動き出す契機となる可能性を見いだすこともできそうだ。写真はオバマ大統領。

(1 / 2 枚)

2014年4月24日の日米首脳会談のもう一方の主役は中国だった。振り返って見れば、冷え込んだ日中関係が、米国の仲介により融和に向け動き出す契機となる可能性を見いだすこともできそうだ。

その他の写真

日米首脳会談後の共同記者会見で、オバマ大統領は「尖閣諸島は日米安全保障条約5条の適用対象」と明言したが、その一方で、同諸島の領有権問題について「領有権については見解を示さない」と言明、日中双方に中立的な立場を堅持することを強調した。この発言自体は米国の新たな見解ではない。

注目すべきは次の大統領発言である。「安倍首相との議論において、私が強調したのは、この問題を平和的に解決するということの重要性だ。状況をエスカレートさせるのではなく、発言を抑制し続け、挑発的な行動を避けることだ」。尖閣諸島は無人島のまま現状維持とすべきだとの主張である。この方針は既に13年2月の日米首脳会談で、オバマ大統領が安倍首相に強く要求、この結果、12年12月の総選挙で自民党が掲げた「公務員常駐」「灯台・船だまり建設」などの公約は13年7月の参院選では取り下げられている。

オバマ大統領は会見で続けた。「どのように日本と中国がお互いに協力をしていくことができるかを決めるべきだ。そして、より大局的な見方をすれば、米国は中国とも強い関係を保っている。中国はこの地域だけでなく、世界にとって非常に重要な国である。明らかなことだが、多くの人口を抱え、経済も成長している。私たちは中国が平和的に台頭することを引き続き、奨励する。中国とは、貿易や開発、気候変動といった共通の課題で多大な好機が存在している」。日本で安倍首相とともに臨んだ記者会見なのに、異様なほど中国に配慮した発言だ。

さらに、「安倍首相に直接言った。この問題について、日中間で対話をせずに、事態がエスカレートし続けることは重大な誤りだということだ。日本と中国は信頼醸成措置を取るべきだ。日本はできる限りのことを外交的にすべきで、私たちも協力していきたいと思っている」と強調した。日中関係改善へ日本が率先して動くことを強く促すとともに、米国が仲介する用意があるという宣言である。これに対し安倍首相も「中国に積極的に対話を働きかける」と約束した。

◆「尖閣戦争」を回避したい米国

米国が尖閣の現状維持(聖域化)を推奨するのは尖閣紛争に巻き込まれるのを回避したいためだ。尖閣諸島をめぐる日中間の対立が長引くことは地域の安全を阻害し、米経済利益への脅威につながると憂慮、日中両国に「自制」と「尖閣聖域化」を強く求めている。

オバマ大統領に近い米外交筋は「オバマ大統領が求める尖閣問題の対話による平和的解決を実現するためには過去40年余と同様、この海域を聖域化するしかない。1972年の日中国交正常化交渉時に田中首相と周恩来首相が了解し合い、1978年の日中平和友好条約締結時に園田外相とトウ小平副首相が実質合意した尖閣棚上げを今後も継続することで事態を沈静化させることだ」と指摘。その上で、「中国が領海侵犯などの行為を止める一方、日本も尖閣諸島への公務員常駐や舟だまり設置など断念し、無人島の尖閣諸島を元に戻すことが先決」との米オバマ政権の意向を明かした。さらに「安倍首相は、高い支持率を維持して国家主義的な政策を推し進めるために外交軍事的な緊張を利用しようとしているが、これは間違いだ」と付け加えた。

中国も米国の意向を無視できない。王毅外相はかねて「領土主権と海洋権益を巡る争いは、解決させる前に問題を棚上げし、共同開発することが可能だ」と明言。経済、環境問題などで難題に直面する中国は本心では日中間の関係改善を希望している。

対中経済関係の冷え込みは日本経済の行く末にも大きなダメージを与える。国内自動車販売台数が断トツの2100万台に達するなど世界最大の消費市場中国のパワーを十分活用できず、この間、日本の経済界が被ったマイナスの影響は数十兆円に達するという試算もある。「隣接する大国である日中両国はウィンウィンの関係で共通の利益を追求すべきだ」(三村明夫日本商工会議所会頭)との声は切実である。このままではアベノミクスの成長戦略にも大きく逆行する。世界の成長センターの中核にある中国との経済関係を発展させることが急務だ。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携