韓国防空識別圏拡大に中国が態度急転、「遺憾の意」表明=混乱にみる外交部と国防部の不一致

Record China    2013年12月12日(木) 19時28分

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8日、韓国国防省は防空識別圏の拡大を発表しました。写真は中国人民解放軍の訓練。

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2013年12月8日、韓国国防省は防空識別圏の拡大を発表しました。日本や中国の防空識別圏とも重複するほか、中国との領土問題になっている蘇岩礁(韓国名は離於島。中国は領海の起点となる島ではなく、岩礁と主張している)も韓国防空識別圏に含まれています。

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中国外交部の定例記者会見では6日、韓国の防空識別圏拡大を問題視しないと答弁していたのが、9日の記者会見では一転、遺憾の意を表明しています。

わずか3日間での態度変更に何があったのか?人民解放軍と中国外交部の足並みの乱れが透けてみえる……と深読みしたいと思います。

■中国外交部定例記者会見

まずは6日と9日の答弁を。

2013年12月6日中国外交部定例記者会見

Q:

報道によると、韓国は防空識別圏をより大きな海域をカバーするよう検討しているようです。中国は韓国側の手法を受け入れますか?もし受け入れないとすれば、どのように反応しますか?

A:

防空識別圏は領空ではありません。ある国が領空の外の公共空域に設定した識別・警戒の範囲です。海や空の管轄権とは関係ありません。韓国側の防空識別圏拡大の手法は国際法と国際的慣例に合致したものであるべきです。中国側は平等、相互尊重の原則に基づくこと、そして韓国側とのコミュニケーション保持を希望します。

2013年12月9日中国外交部定例記者会見

Q:

報道によると、韓国国防省は8日に韓国防空識別圏の拡大プランを発表しました。その範囲は蘇岩礁上空まで拡大されます。韓国側は国防ルート、外交ルートを通じて、日米中などの国々説明したとのことです。中国側は韓国の決定にどのように反応されますか?韓国防空識別圏の蘇岩礁上空のカバーに対してどのような立場をとりますか?中韓の防空識別圏重複についてどのように反応されますか?

A:

中国側は東シナ海防空識別圏策定について複数回にわたり韓国側とコミュニケーションしてきました。韓国側も防空識別圏拡大について中国に(事前)通報しています。中国側は防空識別圏拡大の決定に遺憾を表明します。中国外交部、国防部は発表後すみやかに韓国側に立場を表明し、慎重かつ妥当に対応するべきと要求しました。中国側は平等、相互尊重に基づくこと、韓国側とのコミュニケーション保持を望みます。韓国側に中国と同様に振る舞うことを希望します。

蘇岩礁についてですが、もう一度強調させてください。防空識別圏は領空ではありません。ある国が領空の外の公共空域に策定した識別・警戒の範囲です。海や空の管轄権とは関係ありません。蘇岩礁は孤立した水面下の暗礁であり、領土ではありません。ゆえに中韓の間には(蘇岩礁に関する)領土問題は存在しません。これが中韓双方の共通認識です。蘇岩礁は中韓排他的経済水域(EEZ)の重複海域に位置していますが、関連する問題はEEZ確定交渉で解決するしかありません。

■中国防空識別圏の大ポカ

ここで中国の防空識別圏問題についておさらいしておきますと、「防空識別圏は領空侵犯を予防的に警戒するための範囲であり、何の権利も発生しない。中国はフライトプランの提出などを義務化しているほか、指示に従わなければ武力を行使すると示唆している点で異常」というものでした。

この異常な防空識別圏は国際社会の総すかんを食うわけですが、中国側はその後の記者会見などでは義務や軍事力行使については一切言及せず、「監視して識別するだけでござる」と強調。事実上の路線変換を計っています。

つまり当初発表された「中華人民共和国東シナ海防空識別圏航空機識別規則公告」で義務やら軍事力の脅しやらを書かなければ、日本は不快感を示したとしても米国などその他の国々からはたいして反発されなかったはずで、間違いなく大ポカと言える対応です。

■人民解放軍に引きずられる中国外交部

この「中華人民共和国東シナ海防空識別圏航空機識別規則公告」は中国国防部発表。防空識別圏は人民解放軍マターであり、大ポカも人民解放軍がやらかした可能性が高いと言えます。

で、ようやく韓国の防空識別圏拡大の話になるのですが、6日の中国外交部だけの発表の時点では「どうぞご自由に」という反応。事前通達はあったとしても、日中の防空識別圏と重複する形で韓国の防空識別圏が拡大されれば、中国の行為も正当なものだったとの傍証になるだけに悪い取引ではありません。

ところが9日になると、外交部と国防部はともに「遺憾の意」砲を発射したと態度を変えます。という流れを見ると、外交部が国防部にひきずられている可能性がありそうです。中国国防部的には「防空識別圏=オレの縄張り」的発想が存在しているのではないでしょうか。

■中国外交部報道官に同情してみる

以上は状況証拠からの類推であり断定できる話ではありませんが、ちょっと考えられない大ポカからの流れを見ていると説得力のある解釈ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

中国の省庁はどこも定例記者会見を開催しているのですが、週5回というハイペースで実施しているのは中国外交部だけ。自然矢面に立たされてしまうわけで、たった3日の間に言動不一致答弁をせざるを得なくなってしまった外交部報道官に同情する気持ちも芽生えてきます。

◆筆者プロフィール:高口康太(たかぐち・こうた)

翻訳家、ライター。豊富な中国経験を活かし、海外の視点ではなく中国の論理を理解した上でその問題点を浮き上がらせることに定評がある。独自の切り口で中国と新興国を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。

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