史上最大の在米華人デモに感じる既視感、チベット騒乱と反CNN、ウイグル問題と反ABC

Record China    2013年11月14日(木) 18時33分

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13日、「米国で史上最大の華人デモ、ABCの中国侮辱発言に抗議」 というニュースが中国で大々的に報じられている。法制晩報の報道によると、26都市で3万人が参加したという。

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2013年11月13日、「米国で史上最大の華人デモ、ABCの中国侮辱発言に抗議」 というニュースが中国で大々的に報じられている。法制晩報の報道によると、9日、26都市で3万人が参加したという。

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▼問題の発端

問題となったのは10月16日、米ABC放送のトーク番組『ジミー・キンメル・ライブ!』だ。番組では「政治家のダダっ子ぶりは子ども並み」というテーマで、異なる人種の子ども4人をゲストに招き、お菓子を食べながら国家論を語ってもらうという企画だ。

司会のジミー・キンメルからの「米国は中国から1兆3000億ドル(約130兆円)もの借金をしている。このお金をどうやって返せばいいだろう」という質問に対し、子どもたちがさまざまな「卓見」を披露した。1人は「高い壁を作れば、中国人はお金を取りに来られないよ」と語り、別の男の子は大きく手を振り、テーブルを叩きながら「中国人を皆殺しにすれば、お金は返さなくていい」と発言した。

男の子の衝撃発言には司会者も興味を持った様子だったが、別の女の子が不安げに「私たちが中国人をやっつけようとしたら、中国人も私たちをやっつけに来るよ!」と、双方の武力衝突に発展する可能性を指摘するも、男の子の方は「先に皆殺しにしちゃえば、僕たちをやっつけに来ることはできないよ」と反論。さらに別の子どもが「すぐに中国人をやっつけちゃえば、仕返しできない!」と合いの手を入れた。

司会者は笑いを噛み殺しつつ、女の子に「誰かにお金を借りたら、返さなきゃいけない?」と尋ねると、女の子は毅然とした口調で「絶対返さない!」と言った。司会者はこれに対し「それじゃあ、君もお金を返してもらえなくなるね」と答え、討論は「借りたものをきちんと返せば、次もまた借りやすくなる」という結論で終わった。

子どもの発言に「皆殺しにするの?なるほど、それは面白い考えだね」と相づちをいれたところだけを取り出され、人種差別だと問題になっている次第。全体を見れば単に差別を煽る内容ではないが、毒がありすぎることは間違いない。

ABC及びジミー・キンメルはすでに謝罪したが、謝罪は不十分であり辞職するべきというのがデモの要求となっているようだ。

▼2008年と2013年の共通点

この反ABCデモを伝える記事で引き合いに出されているのが、2008年の反CNNデモだ。北京五輪聖火リレーを報じるニュースで、アンカーのジャック・キャファティが「中国製品はゴミ」「中国人は過去50年間、暴徒と強盗の集団だった」などとコメントしたことが問題視された。

2008年の反CNNデモ、2013年の反ABCデモはいずれも米テレビ局の中国人差別発言が問題になったという点で共通しているが、それだけではない。もう一つ、「中国の少数民族に関する重大事件の直後」という共通点がある。

2008年3月にはチベット騒乱が起きた。世界各国のメディアが注目し、中国の過酷な少数民族支配を批判したが、中国では「暴徒により漢民族が殺された事件」と定義されており、政府は海外メディアの報道に神経をとがらせていた。

2013年10月28日には天安門車両突入事件が起きた。CNNが「天安門車両突入事件:テロか、それとも自暴自棄の叫びか?」とタイトルのコラムを掲載したが、中国では人民日報環球時報など官製メディアがテロとみなさないのがおかしいと反発。今年4月のボストン・マラソン爆発事件(犯人はチェチェン系移民だった)では即座にテロと断定していたのにダブルスタンダードではないかと反発した。

▼1カ月後にこれだけ問題視されたのはなぜ?

中国メディアによると、当初抗議していた人々は謝罪に納得して引き下がっていることが報じられている。事件から1カ月近くが過ぎた今、これほど大規模なデモにまで発展したことは不思議だ。

官制デモだと断じるつもりはないのだが、少なくとも中国国内での大々的な報道には政治利用のにおいを感じる。米国が人権報告書を発表すれば、中国も人権白書を公布して米国の人権もひどいと反論する。「どっちもどっち」と相対化する手法は中国の常とう手段だ。そう考えれば、2008年と2013年、二つのデモがよく似ている理由もよくわかる。

■筆者プロフィール:高口康太(たかぐち・こうた)

翻訳家、ライター。豊富な中国経験を活かし、海外の視点ではなく中国の論理を理解した上でその問題点を浮き上がらせることに定評がある。独自の切り口で中国と新興国を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。

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