<日本人が見た中国>民主主義は絶対善なのか?

Record China    2013年6月9日(日) 8時0分

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「中国民衆は政治改革をどう考えているのか?」という興味深い記事を以前、見かけた。これによると、アンケート回答者の約8割が「政治改革は当然必要」と回答したとのことだ。しかし、ほとんどの人が欧米式の民主主義に追随すべきだとは考えていないようだ。資料写真。

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以前、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報に「中国民衆は政治改革をどう考えているのか?」という興味深い記事が掲載された。

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2010年11月付のこの記事によれば、環球世論情勢調査センターが中国7都市の市民を対象にアンケートを実施したところ、78%の人が「政治改革は当然必要」と回答したとのことだ。しかし、改革の内容については、「欧米式の民主制を推進するべきだ」と答えた人が15.5%に止まり、「中国の特色ある民主政治を建設するべき」という回答が57%に達した。

アンケートの結果全体をまとめると「政治改革は必要だが、欧米式の民主主義をそのまま導入するのではなくて、社会の安定を保ちながらゆっくりと中国独自の民主主義を形作っていくべき」ということになる。アンケートをしているのも、記事を載せているのも、共産党機関紙傘下の新聞なのであまり説得力はないが、それでも個人的には、このアンケート結果は今の中国人の大多数の考えを反映しているのではないかと思った。

民主主義を絶対善と信じて疑わないアメリカ、日本をはじめとする西側先進国は中国の一党独裁を悪と決めつけ、中国に欧米式民主主義の導入を迫っている。2010年も、中国の民主活動家が獄中でノーベル平和賞を受賞して物議を醸した。

かく言う私も日本で教育を受けてきたので、初めて“悪の独裁国家”中国に来たときには「中国の国民は参政権も与えられず、独裁者に抑圧された暗い毎日を送っている」と思い込んでいた。しかし、中国に住んでわかったのは、「人は参政権がなくても結構幸せに暮らせる」ということだ。

歴史に「たら・れば」はないが、もし、1989年の天安門事件で民主化がし実現していたら、これだけ多くの人が幸せに暮らせる国になっていただろうか。「アラブの春」で民主化を勝ち取った国々が直面しているような民主化後の混乱が収まったとしても、近視眼的でポピュリズム的な政策が増えてカオス状態が続いたかもしれない。

日本の政治を見ていると、民主主義という制度は本当に難しい制度だと思う。なぜなら、参政権を持った国民全員に、「自分のポケットにお金が入るか入らない?」ではなく、国の将来を見据えた大局的な判断が求められるからである。

もちろん、一党独裁体制には汚職や無茶苦茶な行政という弊害があるので、政治改革は進めていかなければならないだろう。しかし、上記のアンケートの回答にもある通り、その政治改革は、社会の安定を崩して、多くの人を不幸のどん底に陥れるような形であっては絶対にいけないと思う。

■筆者プロフィール:柳田 洋

北京華通広運物流有限公司 総経理

1966年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、丸紅で石炭貿易に従事。1996年より5年半にわたり丸紅北京支店に駐在するも、起業の志捨て難く、2001年丸紅を退社。そのまま北京に留まり駐在員事務所代行サービス会社を設立。その後、クロネコヤマトの海外引越代理店として物流事業を立ち上げる。著書に「起業するなら中国へ行こう!」(PHP新書)。

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