<日本人が見た中国>「機会平等」と「結果平等」、活力ある国造りに有用なのは?

Record China    2013年5月4日(土) 10時4分

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日本でよく報道されている中国の格差問題。しかし、「その大きな格差自体は必ずしも“問題”ではない」と、中国にいる私は感じる。写真は北京市の国営帽子縫製工場跡。

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日本のニュースを見ていると、「中国は格差問題が深刻である」という言葉をよく目にする。

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しかし、誤解を恐れずに言えば「その大きな格差自体は必ずしも“問題”ではない」と、中国にいる私は感じる。トウ小平は「みんなで同時に貧しくなることはありうるが、みんなで同時に豊かになることはできない」と悟り、「豊かになれる者から豊かになれ。そして立ち遅れた者を助けよ」という“先富論”を掲げ、1978年に改革開放政策を始めた。中国の総設計師は35年前、すでに先富論実行当初は「豊かになれる者」と「立ち遅れた者」の間に大きな格差が生じることを見越していたのだ。

では、何が“問題”なのか。問題があるとすれば、それは貧富の格差ではなく、豊かになるための「機会平等」が保証されていないことである。

今の中国には、「機会平等」さえ保証されていれば、あとは個人の才覚や努力の問題であり、いくらジニ指数が大きくなろうと「結果平等」を求めるのは不合理である、という共通認識があるように感じる。中国の多くの人たちは、何の努力もせずに努力をした人と同じ果実を得たいと思うほど理不尽でもないし、甘ったれでもないのだ。

しかし、いくら才覚があっても、いくら努力をしても、親戚や親しい友人に中国共産党の幹部がいなければ、一生うだつが上がらないことになるかもしれないという現実がある。逆に、党幹部に人脈があれば、その幹部の権力を現金化することによって、才覚がなくても、努力をしなくても、簡単に金持ちになれる。この「機会不平等」な状態が、一般庶民をして一党独裁体制を崩壊に追い込まんばかりの怒りのパワーを発せしめているのである。

中国では年間20万件近い暴動が発生していると言われているが、その多くは日本で報道されているような「貧富の格差が大きく、結果平等が保証されていないから」という理由からではなく、「共産党幹部の汚職や無茶苦茶な行政のせいで、機会平等が保証されていないから」である。多くの一般庶民は、まっとうな方法で金持ちになった人を妬んで暴れているわけではないのだ。

一方の日本。今の日本は中国と比べれば圧倒的に機会平等が保証されている。にも関わらず、結果平等を求める社会主義的な雰囲気が充満しているように思う。よって、貧富の格差が“問題”と捉えられてしまう。しかし、結果平等の社会主義がうまく機能しないことは、「働いても働かなくても月給36元」だったため誰も働かなくなり、著しく国力を落とした過去の中国がすでに証明済みだ。

もちろん、セーフティーネットは設けるべきだ。しかし、良い意味での貧富の格差を是認するような「機会平等」を尊ぶ雰囲気は、日本に活力を与え、結果的に低所得者を減らすことになるのではないかと思う。

■筆者プロフィール:柳田 洋

北京華通広運物流有限公司 総経理

1966年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、丸紅で石炭貿易に従事。1996年より5年半にわたり丸紅北京支店に駐在するも、起業の志捨て難く、2001年丸紅を退社。そのまま北京に留まり駐在員事務所代行サービス会社を設立。その後、クロネコヤマトの海外引越代理店として物流事業を立ち上げる。2012年、日本の国力の維持に微力ながら貢献するために、中国市場開拓サポートサービスを開始。著書に「起業するなら中国へ行こう!」(PHP新書)。

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