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<インタビュー>日本の大学も企業も独りよがり―青島泰之日本技術者教育認定機構専務理事・事務局長(下)

配信日時:2012年5月8日(火) 6時53分
<インタビュー>日本の大学も企業も独りよがり―青島泰之日本技術者教育認定機構専務理事・事務局長(下)
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ユネスコでパリ本部や、東アジア代表として北京事務所長を勤めた青島泰之日本技術者教育認定機構専務理事・事務局長は「ガラパゴス化した日本の大学と大学生を世界に通用させるには教育認定という仕組みがある。企業もこのままでは海外勢に負けてしまう」と警告した。
ユネスコ(国連教育科学文化機関)のパリ本部で長く勤務し、東アジア代表として北京事務所長を6年半間勤めた青島泰之 日本技術者教育認定機構 専務理事・事務局長はインタビューに応じ、「ガラパゴス化してしまった日本の大学と大学生を世界に通用させるには教育認定という仕組みがある」と指摘した上で、企業もこのままでは海外勢に負けてしまう、と警告した。(聞き手=八牧浩行Record China社長・主筆)

――般社団法人・日本技術者教育認定機構の専務理事・事務局長としてのお話を伺います。

この機構(JABEE)は理学、農学の一部を含む工学系の学界と産業界と密接に連携しながら、大学など高等教育機関の技術者教育プログラム(学科)の審査認定を行う機関です。学科で行われている教育の質が満足すべきレベルにあるかどうか、その教育が学生の知識や能力の育成に成功しているかを審査します。グローバリゼーションの中で、日本の大学教育の評価を日本的な認定基準だけでやっていたのでは国際的には通用しない。世界の動きに合わせないと世界で通用する技術者を育てることが出来ない。
日本の大学は明治以来、第三者評価を拒んできた。学問の自治、大学の自治を水戸黄門の印籠のように掲げて、評価されるのを拒否してきた。

――適確でグローバルな認定基準が必要ですね。

今までは、先生が教えたいことを教えるのが教育だと考えられていました。ティーチング(教える)ではなくて学生のラーニング(学習)を手伝うということが教育であるという大きな転換があります。4年間、知識と労力をかけて学んでも、世界の動きに合わせて行かないと、日本の大学教育も学生も世界で通用しなくなる。現にそうなりつつあるように思います。
教育がPDCAサイクル(管理業務を円滑に進める手法)に従って改善が行われているかどうかもチェックする。

――世界のルールに合致するかどうか評価するわけですね。

エンジニア(技術者)の高等教育機関(大学)における教育の認定はアングロサクソンの世界ではずっと昔から行われていて、国ではなく職能団体がやっている。後輩がしっかりエンジニアリングの教育を受けているかどうか、自分たちが審査をするという文化です。1989年、イギリス、アメリカ、カナダ、アイルランドオーストラリア、ニュージーランドなどアングロサクソンの6つの国の技術士会、技術者教育認定団体が集まって協定を結んだ。アジアの国々も続々この協定に加盟してきている。
同じような思想で審査認定した技術者教育プログアム(学科)の質の同等性を相互認証していこうという協定です。留学する時に単位の互換性も出てくるでしょう。エンジニアが国境を越えて仕事ができるようなるのが目標です。

――我々にはあまりなじみがない世界ですね。

技術に対する社会の要求は変わっていくし、技術も進歩するから、教育も昔そのままではなく、変えていかなければならない。ティーチングからラーニングへの転換など、協定では継続的な議論をしています。

――技術は全体がかさ上げされて、同じ基準のもとに いろんな人たちがボランティア的にやっているのですね。

同じ基準ではないです。国によって歴史も文化も違うので、基準は同一ではありません。同じような思想に基づいて作られた基準でそれぞれの団体が審査をします。どこの国でも技術者が後輩の教育の面倒をみる。皆ボランティアです。大学の教授だけでなく企業に勤める技術者も一緒になって教育内容を審査します。

――国連機関で活躍した青島さんが熱い気持ちで取り組んでいるのはいいことですね。

会長以下、尊敬できる先生方、企業のエンジニアが無償で日本技術者教育認定機構に集まってくれている。ただ、問題なのは日本ではアングロサクソン的な文化が根付いていないこと。大学の先生は自身が評価されるのを嫌う文化がある。なかなか教育認定を受けようとしない。
認定と聞くと、ある最低基準さえクリア―すればそれで十分とか、大学のランク付けをするのではないかという誤解がある。学科の教育が社会の求める教育レベルに達しているかどうか、それがシステムとして改善を含めPDCAで回っているかを審査するのです。何を目標にするか、学科がまずそれを設定しなければならない。最低限の一律のお仕着せの教育をしろと言っているのではなく自分で目標を決めてくださいと。

学科自身が教育目標を決め、それに従ってカリキュラムを組む。それを社会に公表し、学生に周知する。認定という「手段」を使って教育のレベルを上げ、かつ国際的な同等性を確保し、国際的に通用するエンジニアを育てることが目的です。

日本で問題なのは、日本企業の学生の青田刈りです。就職協定を決めても守らない。大学の2年、3年に青田買いをしている。3年で就職が決まったら学生は勉強などしない。企業は大学の4年間の学習成果を見ておらず、入学時の偏差値入学試験で判断している。企業は大学のイメージだけで学生を見ており、4年間真面目に勉強した優秀な学生を採用しようとしない。
企業は入社後社内で教育するから大丈夫と言ってきたが、企業はその力もなくなってきている。あわてて「大学は何やっているのか」と大学のせいにしてきている。そして、いまだに青田買いしている。

――就職協定は完全に形がい化していますね。

世界でこんな国はない。海外は5月が卒業期で、就職活動はその年の1月ですよ。日本は3年生の春。世界の人が呆れているが、それを止められないのは大学も企業も学生もガラパゴスしているからです。(完)

<青島泰之(あおしま・やすゆき)氏プロフィール>
1947生まれ、静岡高校卒業、東京大学工学部土木工学科を卒業し、スイス・ローザンヌ連邦工科大学大学院へ留学。75年日本鋼管(現JFE)入社。76年東京大学から工学博士号。82年ユネスコパリ本部に就職、事業予算管理課長、奨学金課長、科学技術計画官などを歴任。97年ユネスコ・ジャカルタ事務所所長代理、2001年ユネスコ・東アジア代表・北京事務所長。08年静岡市教育委員。2010年日本技術者教育認定機構・専務理事・事務局長就任。現在に至る。
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