日銀がインフレ目標の達成時期を削除したのはなぜか―中国メディア

人民網日本語版    2018年5月22日(火) 15時50分

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日本銀行の最近の「振る舞い」がまたしても人々を驚かせている。黒田東彦総裁は2期目の任期の最初に行われた金融政策決定会合で、政策運営方針のコア指標の「インフレ目標2%の達成時期」を突然削除した。写真は日本銀行。

日本銀行(中央銀行)の最近の「振る舞い」がまたしても人々を驚かせている。黒田東彦総裁は2期目の任期の最初に行われた金融政策決定会合で、政策運営方針のコア指標の「インフレ目標2%の達成時期」を突然削除した。黒田総裁は5年前の就任後初の会合では「2年以内にインフレ目標2%を達成する」と高らかに宣言していた。だがその後、達成時期は6回にわたって先送りされ、タイムテーブルも修正が加えられた。(文:張玉来・南開大学日本研究院副院長)

達成時期を削除したことは、市場では金融緩和政策の後退であり、円高と株価の下落を招く可能性があると考えられている。一部の見方によると、日銀は実は緩和政策から撤退する最善のタイミングをずっと注意深く探っていた。2016年末以降、国債の買入を突如減額したが、その背景にはインフラ目標に遠く及ばないこと、さらには当面の日本のコアCPI(消費者物価指数)が1%前後をうろうろし続けていることがある。そこで市場は日銀の動きを「技術的な量的緩和からの撤退」ととらえているという。

黒田総裁は達成時期の削除は市場の誤解を解消するためと強調し、「インフレ目標の達成時期と政策の変動を機械的に関連づけてはならない」と述べるが、現実には政策の可能性の前にさまざまな困難が横たわり、のびのびと手足を伸ばすことはできない状況だ。現在、日銀のバランスシートの名目GDP(国内総生産)に対する比率は100%に迫り、米連邦準備制度理事会(FRB)の4倍、欧州中央銀行(ECB)の3倍にあたる。マネタリーベースは緩和政策以前に比べて3.6%に増え、国債と上場投資信託の保有規模は過去最高更新を続け、国債は12年末の4倍に激増し、上場投資信託は保有する全株式の時価総額の約4%を占める。こうした数字からわかるのは、日銀の政策がほぼ限界に近づいているということだ。

一方、緩和政策の副作用も拡大を続けている。第1に国債や株式は市場で深刻なねじれ現象が起きている。日銀が国債を大量に保有するため、国債市場は日に日に膠着し、金融の機能が徐々に失われている。日銀の資金が株式市場に大量に流れ込んだため、株価が上昇したが、日銀が株を保有する企業の株主の監督管理が不十分だという問題も起きている。最大のリスクは将来の緩和政策からの撤退リスクだ。第2に金利の影響を受けて、金融機関の収益力が大幅に低下している。三菱東京UFJ銀行など主要銀行は収益悪化により採用を大幅に減らし、国内営業所を合併・削減し、大規模な海外進出を進める。地方経済を支える地方銀行はさらに深刻な苦境に陥っており、17年には全国の地方銀行105行の収益規模は12年比で97%も急激に低下した。第3に預金のゼロ金利が貯蓄を好む一般の国民に影響を与え、銀行預金で生活する一部の高齢者は大きな打撃を受けている。第4に超緩和政策が政府の借金コストを大幅に引き下げたが、財政規律の緩みを招き、「短期の政策金利をマイナス0.1%、(長期金利の)10年物国債の金利を0%にする」という政策の枠組設計が日本政府をさらなる財政活性化への依存に駆り立て、20年の財政健全化計画は暗礁に乗り上げつつある。

達成時期の削除により日銀にはある程度の政策の自由度が与えられたことは間違いない。たとえば物価は上昇しないが、経済が好転しているという場合には、追加緩和の必要はなく、同時に量的緩和撤退の検討に必要条件を提供することにもなる。だが黒田総裁が2期目にこれまでにもまして厳しい課題に直面するようになることは確実だ。19年の消費税率引き上げが経済に圧力をかけるとみられること、20年の五輪景気もいずれ消滅することなどだ。これと同時に、FRBは利上げを緩やかに進めており、ECBも緩和政策の縮小を始めた。こうしたことがいずれも日銀への重圧になるとみられる。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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