<日本人が見た中国>ちっちゃい日本野郎…あまり聞かれなくなった「小日本」

Record China    2012年3月22日(木) 8時12分

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7年ほど前。抗日戦争を題材としたあるドラマの撮影で、監督と私とエキストラの1人とで打ち合わせをすることがあった。私の部下役を演じるエキストラは、50代あたりの中国人男性。そこで私は受け入れがたい言葉を耳にした。写真は矢野浩二。

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※中国に渡って10年。現在、「中国で最も有名な日本人俳優」と称される矢野浩二氏によるコラム。

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7年ほど前。抗日戦争を題材としたあるドラマの撮影で、監督と私とエキストラの1人とで打ち合わせをすることがあった。私の部下役を演じるエキストラは、50代あたりの中国人男性。打ち合わせの最中、彼が何気なくこんなことを言った。

「わかりました。それじゃあ、“小日本”がセリフを言い終わったら、私がセリフを始めればいいんですね」。“小日本(シャオリーベン)”―ご存知の方もいるかもしれないが、これは日本や日本人に対する蔑称だ。「取るに足らない日本、度量の狭い日本、領土も背丈も小さい日本……」といった意味が込められている。「小日本はやめてくださいよ!」さすがに聞き流すことはできず、僕は思わず声を荒げた。その声がスタジオ内に響き渡り、辺りが静まり返る。「一緒に仕事しているんだから、お互いを尊重し、礼儀を尽くすべきじゃないですか?僕には名前も、役名もある。なんと呼ばれようがかまいませんが、小日本と呼ばれるのは我慢できませんよ」。

こうした呼ばれ方は、僕個人のみならず、日本や日本国民がいわれなき軽侮を受けている気がして我慢ならない。何か我慢できないことがあるときには、ためらわず、臆せず、きちんと言葉にして相手に伝えていかなければならない。後ろ盾も無く中国で仕事をする日本人として、これは心得ておくべき点だと、それまでの経験からも思うようになった。日本人役者としてどのようなスタンスで活動していくか?それを主張できなければ、この地で役者を続けるのはもちろんのこと、中国人と対等な関係を築いていくこと自体が難しいものになってしまうと感じているからだ。これは役者以外でも言えることだ。

2008年の北京五輪を経て、中国が国際社会を意識しはじめた近年は、このような差別用語は以前ほど聞かなくなってきている。僕に対する呼び名も、「浩二(ハオア〜)」というのがもっとも多い。「矢野浩二(シーイエハオア〜)」と、フルネームもよくある。

「リーベンレン(日本人)!」―露骨な呼ばれ方も、なくはない。

「あのリーベンレンよ(あの日本人よ)!」―なんか悪いことしたんか〜?!

「『天天向上』の司会の人!」―2億5000万人の視聴者を持つバラエティー番組の影響力は絶大だ。

いろいろ言われるが、指をさされて、ただ笑顔で頷かれることもある。少し前までは半ば習慣化されていた、日本人に対する蔑称。ここ数年の中国人の意識の変化は、このようなところにも表れているのかもしれない。

●矢野浩二(やの・こうじ)

バーテンダー、俳優の運転手兼付き人を経てTVドラマのエキストラに。2000年、中国ドラマ「永遠の恋人(原題:永恒恋人)」に出演し、翌年に渡中。中国現地のドラマや映画に多数出演するほか、トップ人気のバラエティー番組「天天向上」レギュラーを務める。現在、中国で最も有名な日本人俳優。2011年、中国共産党機関紙・人民日報傘下の「環球時報」主催「2010 Awards of the year」で最優秀外国人俳優賞を日本人として初受賞。中国での活動10年となる同年10月、自叙伝「大陸俳優 中国に愛された男」(ヨシモトブックス)を出版。

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