中国は米中貿易戦争望まず、「米一国主義」には「多国主義」で対抗=RCEPや日中韓FTAを推進―中国政府経済学者代表団

八牧浩行    2018年3月26日(月) 6時20分

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中国経済学者代表団がこのほど日本記者クラブで「2期目の習政権」と題して会見。周強武・中国財政部国際財経センター長は、米国の輸入関税や対中強硬策などについて、「明確なWTO違反であり、世界で様々な逆行的な反応を引き起こしている」と批判した。写真左端が周氏。

中国政府経済学者代表団(財政部や商務部のエコノミスト)4人がこのほど日本記者クラブで「2期目の習政権」と題して会見した。周強武・中国財政部国際財経センター長は、米国の鉄鋼、アルミ製品への輸入関税や対中強硬策などについて、「保護主義的な一国主義で明確なWTO違反。世界で様々な逆行的な反応を引き起こしている」と批判。「一国主義の不合理に対し我々は対策を講じることになるが、貿易戦争を望んでいない」と強調した。李剛・中国商務部国際貿易経済協力研究院副院長は、米国がTPP(環太平洋連携協定)離脱やNAFTA(北米自由貿易協定)見直しなど反グローバル化を推進していることを問題視、日中韓印東南アジアなどで協議中のRCEP(東アジア地域包括的経済連携)や日中韓FTA(自由貿易協定)を積極的に進める方針を明らかにした。

同席した劉世錦・中国発展研究基金副理事長は、今後年平均6.3%程度の経済成長により「2021年までに小康(安定)社会の建設が実現する」との見通しを示した。白重恩・清華大経済管理学院副院長は「習近平政権は金融リスクの防止策を重視している」と解説した。

周強武・中国財政部国際財経センター長と李剛・中国商務部国際貿易経済協力研究院副院長

の発言要旨は次の通り。

<周強武・中国財政部国際財経センター長>

鉄鋼、アルミ輸入に対する高関税付与などトランプの保護主義的な政策は世界で様々な逆行的な反応を引き起こしている。米国の新たな政策は一国主義の表われで、明確なWTO(世界貿易機関)違反である。世界の素材や加工品に高い関税をかければ中間品など多くのモノの価格が上昇する。

中国は貿易不均衡や私財などの問題について互いに平等に話し合うべきだと考えている。貿易戦争を望んでおらず、米国を含むあらゆる貿易パートナーと協調主義に基づく協力を推進している。平等な話し合いによって、2国間に存在する貿易や投資に関する問題を解決しなければならない。一国主義の不合理に対し我々は対策を講じることになるが、貿易摩擦をエスカレートさせようとは考えていない。米中間では昨年から外交安保、経済対話、サイバーセキュリティ対話など、4つの対話メカニズムがある。

◆「一帯一路」、255案件が完成・工事中

国際社会で巨大経済圏構想「一帯一路(海と陸のシルクロード)」への協力の機運が高まっている。昨年5月の「国際協力力フォーラム会議」で5種類にわたり279の合意ができた。うち255案件はすでにすでに完成または現在工事中である。24の案件は現在推進されている。技術の鉄道港湾14件、産業投資は16件、金融協力は16件を数え、国民同士の交流案件も多い。さらに86の国と国際機関と101の協力文書を交わし、うち2017年に新たに調印した文書は50余りある。

一帯一路は国連、APEC(アジア太平洋経済協力)や上海協力機構など多くの国際文書にも盛り込まれ、国際社会における影響力はさらに強化された。一帯一路に関係する7つの沿線国で人民元決済が可能となり、沿線国との貿易が昨年、1兆1000億ドルに達した。中国は一帯一路沿線国の学生に奨学金を出し、中国留学を奨励している。

ケニヤ国内や中国・ラオス間の高速鉄道建設、カンボジアやギリシャの港湾建設、スリランカやインドネシアの高速道路プロジェクトなどが進められている。中国と欧州間の貨物列車は年間3600往復に上り、沿線関係国に貿易増大と雇用機会をもたらした。

<李剛・中国商務部国際貿易経済協力研究院副院長>

トランプ政権は貿易保護主義的な政策措置をとっており、グローバル化に逆行している。米国内の政治的な配慮が背景で、ポピュリズム政権と言える。最大の貿易国によるこの種の政策発動他の国々から反対されている。米国は多国間の貿易協定に対し冷淡で、TPPから撤退に続いてた、NAFTAの再協議開始も宣言。韓国との貿易協定も再協議を決めた。強い姿勢で立場の弱相手国を抑え米国の利益を最大化しようとする目標が見え隠れしている。

世界の貿易分野においては多角的な国際方式でルールが作られているので、拘束力があり、すべての国が守らなければならない。米国のやり方がいつまで通用するか見極めていきたい。

◆世界で都市化が進展、スーパーグローバル時代に

グローバル化に逆行する動きの中で昨年の世界貿易の伸びは米国が志向する傾向と逆の動きを見せている。貿易の伸びは全体の伸びを上回った。米国際組織や著名学者によると国保護主義の影響を除くと世界貿易の勢いはさらに良くなったはずという。経済の流れを一国の動きで止めることはできない。世界では都市化が進み、スーパーグローバル時代に入ったとの見方さえある。

プラットフォーム型の企業では構造転換やバリューチェーンの再統合が今後進行。グローバル化を止めることのできない大きな流れとなる。アジア太平洋地域では、中日韓・ASEAN・豪州・インドを含めたRCEPを長年議論してきた。中国も他の参加国と積極的に協議を推進、早期妥結を支持している。TTPはハイレベルの協議だが、RCEPは参加国のそれぞれの発展の度合いを勘案する必要がある。中日韓のFTA協定についても中国は積極的な姿勢で取り組んでいる。今後もオープンな姿勢で自由貿易枠組みを作っていきたい。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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