芸術系大学が「ルート」ではない日本で一人前の役者が育つ方法

人民網日本語版    2018年3月9日(金) 9時0分

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春節(旧正月、今年は2月16日)が終わり、中国の各名門芸術系大学は、大学入試のシーズンを迎えている。

俳優の宮崎葵(写真左)と堺雅人(写真右)が出演した映画「ツレがうつになりまして」のスチール写真。

春節(旧正月、今年は2月16日)が終わり、中国の各名門芸術系大学は、大学入試のシーズンを迎えている。今年も芸術系大学がとても人気で、受験生が長蛇の列を作り、彼らに付き添う保護者もおり、試験官の真剣な指摘、先輩らのバックアップなどが「風物詩」となっている。

最新統計データによると、今年も芸術系大学の受験生は増加し、中でも最も人気なのは依然として演劇学部だ。北京電影学院を例にすると、演劇学部の合格率は僅か0.82%と、非常に倍率の低い学部で、将来役者になることを夢見る若者100人のうち、合格できるのは1人未満ということになる。

芸能界を熱望する若者は増加しているものの、実際に出演している若手役者らは、「演技が下手」と指摘されることが多いのが現状だ。20年以上指導に当たっている中央戯劇学院の教師・劉天池さんはある番組で、「今よく見かける役者のうち、演技が『合格点』にあたるのは10%ほどだろう。それは、競争のメカニズムがうまく構築されていないことのほか、マネージメント会社などがあまりにも早く大学生と接触していることとも関係がある」と指摘した。

では、日本の芸能界はどのような現状なのだろう。取材によると、日本でも、新人の役者がどんどん登場しているが、中国のように「芸術系大学の入試」に若者が殺到するという状況は見られないことが分かった。若手俳優の演技は、舞台などの現場で磨き上げられていくという。日本の若手俳優は脇役から経験を少しずつ積み、その間もアルバイトなどをしながら撮影にも臨む。そして、市場と業界に少しずつ認められるようになり、大きな役をもらえるようになるというのが、日本のほとんどの役者が歩む道だ。

日本の若手俳優はアルバイトをしながらオーディション

早稲田大学のアジア文化研究学者・李思園氏は、「演劇学科を設置する芸術系大学も少数ながらあるものの、日本では、『演劇学部』出身の役者はほとんどいない。専門的な演技の訓練を受けているかは日本ではあまり重視されない。日本では、役者になる方法がいくつもあるが、映画・ドラマ界には、『芸術系大学出身』という概念はない。役者になることを目標にしている日本の若者は普通、所属している芸能事務所を通して、映画やドラマのオーディションを受ける。また、学生アマチュア劇団にまず入り、その後プロの劇団で演技を磨く人もいる。その他、スカウトされたり、雑誌のモデルから役者になったり、タレントとして人気になってから映画やドラマに出演するようになったりする人も多い」と説明した。

アイドルグループが所属する事務所が、所属するメンバーにダンスや歌のレッスンを受けさせるケースもあるが、日本の役者の「演技」は通常、舞台やカメラの前での実践を通して磨き上げられたものだ。つまり、日本の役者は小さな脇役から演技の経験を少しずつ積なければならないということだ。役者になってすぐに主役を演じて、一気に売れっ子になるというケースはほとんどいない。反対に学びながら実践経験を積むという「下積み」の期間がかなり長いかもしれない。俳優・堺雅人は、「リーガルハイ」や「半沢直樹」などの大ヒットドラマに出演したことで人気俳優となったが、そんな彼にも10年以上の「下積み」期間があった。堺雅人は早稲田大学文学部に入学し、同大学の演劇研究会を母体とする劇団「東京オレンジ」の旗揚げに参加して看板俳優として活躍した経験を持つ。そして、役者の道に目覚め、早稲田大学を退学して、大手芸能プロダクション「田辺エージェンシー」に所属するようになり、舞台やドラマの脇役をしながら演技の腕を磨いた。その後、30歳の時にNHK大河ドラマ「新選組」に出演して視聴者に名前が広く浸透するようになったという。

一方、中国の場合は、マネージメント会社や芸能プロダクションが大学にまで足を運び、在学中に契約を結んでいる学生も多い。そして、1、2年生で映画・ドラマに出演するようになり、3、4年生でもう主役を演じるようになっているというケースもある。あまりにも早く有名になり、スターになるという状況は、日本で役者が育つ環境とは全く異なる。では、日本の若手役者は、どのような市場環境の下で演技の腕を磨いているのだろう?

李氏によると、「日本の若者が役者になる主な目的はお金儲けではない。そのような若者は役者の道に入る前に相応の心の準備をしている。市場の波の中で方向を見失わないのは、日本の役者業界の生態と役者自身の信念とも関係がある。日本では、トップスターであっても、その出演料は中国の役者と比べるととても少ない。例えば、今最も旬の女優・新垣結衣が出演する視聴率の高いドラマでも、1話あたり約10万元(約168万円)ほど。そのため、多くの若者が役者になりたいのは、大スターになりたいからではなく、役者の仕事が本当に好きだからだ。そのため、彼らが一番大切にしているのは演技そのもので、それを心から追求している。若手役者の場合、アルバイトをしながらオーディションを受けているというパターンがほとんどだ。ドラマ『孤独のグルメ』で主役を務める俳優・松重豊は、20歳そこそこの時に、劇団「蜷川スタジオ」で舞台に立ったり、フリーで国内外のドラマ、映画などに脇役で出演したりしながら「下積み生活」をし、生計を立てるために中華料理店でアルバイトをしたりし、約10年してからやっと役者として生計が立てられるようになったという。そのように、長年世間に揉まれ、社会を観察してきたという経験が役者にとっては「大きな財産」となっていることに疑問の余地はない。

人気だけのアイドルは存在せず、演技が下手なら生き残れない日本

ある業界関係者は、「若手役者の演技が下手であることは、市場で良い競争メカニズムが構築されていないことと関係がある。日本では、若者は役者になった後、ゆっくりと時間をかけて演技を磨くことができる。そして、顔面偏差値やファンの数だけを頼りにして、演技を完全にないがしろにしているという役者はいない。役者の演技を市場やプロがいつも見張っているため、演技が下手な場合は絶対に生き残ることはできない」と指摘する。

それに対して、日本の視聴者は役者に厳しい目を向けることはなく、一人の役者が少しずつ経験を積んで成長し、最終的に一人前の人気役者になるのを「見守り」、その「成長を感じる」ことを好む一方、業界の評価基準や競争のメカニズムはとても厳しく、役者一人が長年活躍するためには、オファーを受け続けなければならず、そのためには業界と市場の両方に認められる必要がある。

中国と比べると、日本の映画・ドラマ業界は保守的で、映画会社やテレビ局数社が牛耳っている。そして、中国のように、大量の資本が映画・ドラマ業界に流れ込むという状況も存在しない。キャスティングの際、「人気」も重要な要素であるが、実際にキャスティングをするのは監督、プロデューサーなどの業界内の人たちだ。

また、日本の出演料は中国と比べると「年功序列」で、若い人気役者よりベテラン役者のほうが高い。例えば、同じドラマに出演していても、中堅俳優の香川照之の出演料はアイドルの松本潤より高い。そのような環境なら、出演料が高いのに演技が下手というケースは自然とほとんどなくなる。(編集KN)

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