<在日中国人のブログ>中国の「カーブでの追い越し」ではなく、トヨタの「地道」を学ぶべき

雪田    2018年5月25日(金) 19時0分

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中国は新エネルギー車に助成金を出しており、ここ数年で新エネルギー車を生産する企業が一気に増えた。北京モーターショーの主役もこのような国産の車だった。写真は中国の電気自動車。

先日、中国の李克強首相が日本を訪問した際、トヨタの工場を見学し、水素燃料電池車「MIRAI」に興味津々だった。李首相が「MIRAI」の説明を受ける写真は中国で報道され、その表情はとても真剣で、まるで40年前のトウ小平が初来日時に新幹線に乗った時のような驚いた表情だった。

ここ数年、「カーブでの追い越し」という言葉が中国で流行し、今や至る所で聞くことができる。ガソリン自動車からEVへの転換期という「カーブ」を活用して先進諸国を追い越すとの意味が込められており、自動車産業でも日本企業を追い越し、さらに世界でリーダー企業になることを目標としている。

中国は新エネルギー車に助成金を出しており、ここ数年で新エネルギー車を生産する企業が一気に増えた。北京モーターショーの主役もこのような国産の車だった。

ただ、筆者は「カーブでの追い越し」と言う言葉は好きではない。むしろ、ほぼ逆の意味となるトヨタ式の「地道」をお薦めしたい。

先日、30年後の人々の生活について伝えた記事を見た。その記事では、1000キロメートル以上航続できる車が登場している。夢のような車だが、実はかなり近い車はすでに販売されている。燃料満タン時の航続距離は1000キロメートルに達しないものの、参考値ながら650キロメートルの航続が可能となっている。そう、トヨタの「MIRAI」だ。

MIRAIが発売された当初は法人の購入が目立ったが、現在は個人の購入者も増えており、日本の街中でこの車に出会う機会も増えた。

MIRAIの成功は、トヨタの業界での地位をさらに固めた。着実に自社の製品を造り、一歩一歩技術を蓄積し、中国企業のように「做大做強(大きく強く)」といったスローガンを掲げることもなく、進歩だけを求めている。

約20年前、トヨタは「プリウス」を発売し、ハイブリッドという新技術でより燃費の良い省エネ車を造り出した。その後、世界で環境保護の概念のもとで新しい情勢が現れ、純電気自動車が次々と発売された。中国の新エネルギー車の大部分は電池自動車で、国の莫大な補助金に支えられている。

日本のハイブリッド車の販売量は年々拡大し、生産コストも減りつつあり、性能も高まっている。ガソリン価格が高い時期、ハイブリッド車がよく売れた。伝統的な自動車の「精造」から技術を蓄積し、環境に優しいハイブリッド車を開発し、その技術をさらに進歩させ、水素燃料電池車ができた。電気自動車よりはるかに技術が上だと感じる。

個人的には、トヨタはトップに登る道のりで決して「カーブでの追い越し」をやったのではなく、むしろかつての業界トップだったフォード社に遠慮していた気がする。ただ、技術力の高さと時代の波に合わせた先見の明で、世界中のドライバーから支持され、業界トップの座に押し上げられたのだと思う。

今後、トヨタが世界の自動車業界を何年リードできるかは分からない。世界をリードする大国が移り代わるように、将来は優秀な競争者が必ず現れるだろう。現在トヨタの勢いは穏やかである。従来の車種は引き続き発展させ、ハイブリッド車は販売が拡大し、新エネルギーの水素燃料電池車は高度な技術力が認められた。将来的には「航続距離1000キロメートル」も実現できそうだ。さらに、高齢化社会を見据え、自動運転技術の開発も着々と進んでいる。李克強首相はトヨタでMIRAIだけではなく、自動運転も見学した。

将来、トヨタを超える企業は「カーブでの追い越し」を掲げる勝負心を前面に出した企業か、それとも「地道」の精神で一歩一歩技術を蓄積し、忍耐強く頑張っている企業か?世界中が注目している。

■筆者プロフィール:雪田

中国北京市生まれ、名古屋在住。北京航空航天大学卒、宇宙開発の研究院で修士号を取得。1990年代に来日し、IT業会社に勤務。現在は語学塾を経営する傍ら、市民グループなどで中国関係の講座をしたり、フリーライターとして日本のことを中国の雑誌などで紹介している。

■筆者プロフィール:雪田

中国北京市生まれ、名古屋在住。北京航空航天大学卒、宇宙開発の研究院で修士号を取得。1990年代に来日し、IT業会社に勤務。現在は語学塾を経営する傍ら、市民グループなどで中国関係の講座をしたり、フリーライターとして日本のことを中国の雑誌などで紹介している。

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