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<コラム・巨象を探る>驚くべき躍進の陰で、深刻な「急成長の負の遺産」―日本の経験生かせ

配信日時:2011年9月22日(木) 8時16分
<コラム・巨象を探る>驚くべき躍進の陰で、深刻な「急成長の負の遺産」―日本の経験生かせ
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21世紀は「中国の時代」とも言われる。北京市内は近代的ビルが林立し、活気に満ちている。ただ、街路はおびただしい数の車が溢れ、空はスモッグで霞んでいた。急速な経済成長の「負の遺産」も否定できない。写真は北京市内風景。
21世紀は「中国の時代」とも言われ、首都・北京市内は活気に満ちている。ただ、街路はおびただしい数の車が溢れ、空はスモッグで霞んでいた。急速な経済成長の「負の遺産」も否定できない。写真は北京市内風景。

北京市内は近代的ビルが林立し、地下鉄も14路線が完成、総営業延長距離は世界一になった。車内には若者が多く、携帯電話で話す声も甲高いせいか、活気に満ちている。市内のあちこちで大型クレーンが稼働し、ビル建設ラッシュの真っただ中。地下鉄延伸や道路建設などインフラ工事も進んでいる。

北京一の繁華街、王府井は巨大なデパートやオフィスビルが立ち並び、多くの中国人や外国人で賑わっていた。ここは東京・銀座にもたとえられるが、その華やかさと喧騒は本家をはるかに上回る。グッチやエルメス、バーバリーなどのブランドショップが軒を連ね、若い女性の多くがこれ見よがしにこれら欧米の有名ブランドを身に着けていた。

数年前の北京で、ブランド品を持っている中国人がいれば、その多くは偽物だったが、今や大半が本物というから、変われば変わったものだ。また、以前の中国では店頭で価格交渉をして値切って買うのが常識だったが、目抜き通りの商店では値段の交渉をする風景は見掛けなかった。最近の10歳代から20歳代の若年層は一般的に値切る行為はみっともないと思うようになってきているという。

一般庶民の住居地区も歩いたが、昔ながらの野菜や肉を売る店に交じってコンビニ店も出現。商品も日本や欧米先進国と変わらない。食堂・レストランも外食を楽しむ人々でいっぱい。数年前に比べ、明らかに生活水準は向上しているとの印象を持った。ある初老の男性は「10年前には比べ豊かになったのは確かだ」と明るい表情で話していた。

しかし、あまりに急激な経済成長の結果、多くの分野で歪が生じている面も否めない。街路はおびただしい数の車が溢れ、深刻な渋滞が生じている。10キロほど距離なのに車で1時間半以上もかかったこともあった。空はスモッグで霞み、裏通りに密集する庶民の家々も依然見劣りのするものだった。

大気・水質汚染、食品安全問題、交通事故、労働災害、格差、物価高、就職難など急速な経済成長の「弊害」が一気に噴出している。東京大学北京代表所の宮内雄史所長は「日本は高度成長の弊害を克服し、安全で調和のとれた国へと転換した。日本は中国にそのノウハウを伝授することができるし、中国もそれを求めている」と力説する。確かに日本が40年近くかけて達成した高度経済成長を、中国は改革開放後のわずか20年で実現。さらに拡大しつづけ、しかも人口、国土も日本の10倍、26倍とあって、「負の遺産」も半端ではない。

日本では、1960〜1970年代の高度成長時代に、水俣病、森永ヒ素ミルク事件、カネミ油症事件、スモン薬害事件、薬害エイズ事件に代表される多くの社会的大事件が発生した。光化学スモッグやヘドロ堆積などによる環境破壊もひどかった。現在、中国では目覚ましい発展の陰で、かつての日本の姿をほうふつとするような事件や不祥事が頻発している。

日本では殺人案件や交通事故死が40年前に比べ半分以下に。公害訴訟も激減している。水洗化率の飛躍的向上や医療施設整備などにより、平均寿命も世界有数の水準となった。健康・雇用保険や年金も整備され国民の暮らしぶりは豊かになった。「日本人は経済成長時代を懐かしみその技術を誇るのではなく、高度成長の歪の克服法や経済構造を転換するためのノウハウを中国をはじめとする発展途上の国に提供することによって、活路が開ける」との宮内所長の提言は傾聴に値しよう。

「中国はまだまだ安心・安全面では後進国。日本の公害対策や保険制度を学びたい」―。これは北京で出会った中国政府や企業経営者の多くが一様に語っていたことだ。「中国と日本が争えば利を失い、和すれば益する」「日本と中国は利害が一致している」とも口を揃えていた。日中の経済関係は相互に補完し合える分野が多い。とりわけ環境問題や省エネ、さらには高齢化に対応した医療や年金などの社会インフラに関しては日本が今後、新たなモデルプランを提示し大きな対価を得ることも可能だ。日本の成長戦略にも寄与しよう。

<巨象を探る・その10>
<「巨象を探る」はジャーナリスト・八牧浩行(株式会社Record China社長・主筆)によるコラム記事>
※掲載している内容はコラムニスト個人の見解であり、弊社の立場や意見を代表するものではありません。
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