東アジアの一層の経済発展へ「日中韓FTA」締結を急げ―日中の官民が一致

Record China    2011年8月26日(金) 17時47分

拡大

2011年8月、日中の平和促進と経済発展を目的とした有識者会議、第7回北京・東京フォーラムが北京で開催され、相互に協力していくことで一致。東アジアにおける貿易自由化を進めるため日中韓3カ国によるFTA締結を急ぐべきだとの方向が打ち出された。

(1 / 4 枚)

2011年8月、日中の平和促進と経済発展を目的とした有識者会議、第7回北京・東京フォーラムが北京で開催され、両国経済のさらなる発展に向け相互に協力していくことで一致。世界の成長センターである東アジアにおける貿易自由化を進めるため日中韓3カ国によるFTA(自由貿易協定)締結を急ぐべきだとの方向が打ち出された。両国の主な代表の発言は次の通り。

その他の写真

鄭新立・中国国際経済交流センター副理事長

中国の国内市場規模は急激に拡大しており、日本は近隣国として輸出を促し、結果として日本経済の復興にとっても重要な牽引力になる。東日本大震災によって日本の部品工場がダメージを受け、サプライチェーンの再構築が課題となっている。中国側には海外投資を受け入れる準備が整っており、貿易も促進される。また、中国の所得水準の向上に伴い、日本への旅行や留学が急増。中国の留学生を受け入れる支援策を行えば、もっと留学しやすくなるし、日本への観光客についてはビザ取得を簡素化すれば、さらに交流が進む。

長谷川 閑史・経済同友会代表幹事(武田薬品工業社長)

アジア開発銀行の予測によると、2050年までの世界のGDPシェアで52%をアジアが占めるとされている。世界で最も重要な地域であり、特に日本と中国が重要。一方で、世界全体では、人口(現在70億人)がアフリカ中心に100億人に激増するとの予測を背景に、エネルギー問題、食料問題、水問題するなど多くの課題に直面しており、日中が協力して解決に向けて行動しなければならない。アジアとの関係では、日中韓でのFTA(自由貿易協定)締結を急ぐ必要がある。日中両国の共同提案がASEAN+6(日本、中国、 韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド)という形で東アジア広域自由貿易圏の実現に向けた交渉を加速、実現に向けて動き出すべきだ。

李勇・財政部(省)副部長

我々は2つの厳しい試練にさらされている。第1にいかに今回の危機に対応するのか。G20の枠組みで一連の措置を行い、成果を出してきたが、金融危機は過ぎ去っていない。かつてのアジア通貨危機に際しては成功を収めたが、今回もスクラムを組む必要がある。2点目として、中長期的にいかに持続可能な枠組みを構築するか、日中両国も真剣に対処しなければならない。危機対応においては、日中がトップリーダーになり得る。世界第2位、第3位の経済大国であり、アジアにおいては日中両国で80%の経済力を誇る。また、地理的に近く、両国の各界の方が取り組めば、政治経済、民間交流、社会、様々な面で相互協力する枠組みを構築でき、互恵協力の土台づくりができる。

具体的には、まず自国の経済構造を調整する中で、お互いに協力、支援し合うこと。内需拡大などについては一致しており、発展段階で補完性がある。技術、ノウハウ、管理方法は違うが、産業の分業がつながっており、マーケットの補完性は高い。両国の経済補完性と、日中の地理的な利便性を活かし、チャンスを掘り起こす必要がある。

2つ目は、財政協力として、アジア地域において比較的管理された地域貿易と、貨幣金融メカニズムを構築すること。ASEAN+3(日中韓)において立証されているが、東アジアにおける金融協力の枠組みがあり、通貨のプールもできている。どこかの国が国際収支で困難に陥ったときに支援できるようになっており、地域の発展のためにASEAN+3でアジア債券市場も検討されている。

3つ目として、中日両国が国際経済実務において手を携え、役割を高めることだ。アジアを脱して世界的な経済情勢の中で世界経済の強い発展を推進していくこと。IMFその他のフォーラムに積極的に参加し、アジアの経済ガバナンス構築に積極的に参加していくべきだ。中日関係がアジア太平洋地域において重要であり、広範な協力はアジアと世界に美しい未来をもたらす。両国だけでなく、世界全体にも良い影響を与えると思う。

槍田 松瑩・日本貿易会会長(三井物産会長)

日中間のFTA、ASEAN+6が重要だ。貿易摩擦や海外の景気に影響されるので過度の外需依存は避けなければならないが、輸出あっての内需拡大といえる。特に中国の場合、持続的な成長を得るためには、輸出が非常に重要。中国は世界最大の輸出大国であり、GDP比で27%を占める。日本の産業構造は、中国に依存しており、分業体制として対中国では、電子部品やプラスチック、輸入では通信機などが多くを占める。日本の部品を使って、世界の工場である中国で生産し、日本に再輸出する傾向だ。韓国も台湾も多くのの原材料が中国へ輸出され、完成品が日本等に輸出されている。

こうした国際分業体制を活かしながら、貿易の発展を促進する上で重要なのはFTAだ。アジア地域の主な自由貿易協定を見ますと、ASEANは中国、韓国、日本のそれぞれとFTAを締結している。中国と台湾の間でもECFA(両岸経済協力枠組協議)がある。一方、日中韓の間には、まだFTAが締結されていない。3カ国間の連携は、ビジネスなど多岐にわたり非常に緊密になっており、日中韓3カ国の官民が一体となって、積極的に進めるべきだ。

龍永図・中国WTO加盟主席交渉代表

アジア地域の経済共同体づくりを進める上で、重要になるのは中日両国の団結だと思う。中日間では遅々として進んでおらず、恥ずかしく思わなければならない。EUが最も進んでおり、アジアは全体の活動では一番遅れている。中日両国はアジア発展の未来の鍵でもあり、中日両国さえ協力していけば、強力な影響力を発揮できる。アジアの未来は中日両国の協力以外にない。日本経済は、この数年、低迷しているが安定している。中国経済の持続成長には、中小企業の力を重視していかなければならない。日本の製造業には多くの従業員が存在。技術輸出をしている一方で、技術社員を育成することに力をいれている。

しかし、中国、特に沿岸都市の指導者は、農民工層は都市に長く住むことはできないので都市で働いてもその後農村に戻らないといけないという考えを持っている。これを改め、一般の労働者を主力にしていかないと、中小企業が長く発展していくことはできない。いくらイノベーションを叫び、良い技術があったとしても、労働者によって具体的に製品にしていかなければ、中国の製造業は発展しない。中国は日本の経営者が労働者を重要視する姿勢を学ぶ必要がある。

山口 廣秀・日本銀行副総裁

世界経済についての不確実生が非常に高まっている。米国では家計のバランスシート調整が続き、欧州では国家財政リスクが問題だ。この結果、国際金融市場は非常に神経質となっている。中国ではインフレ圧力を抑制しつつ、いかに経済成長を成し遂げるか。長い目で見て、外需ではなく、どのようにして内外需のバランスのとれたかたちにするかが課題となる。日本では、東日本大震災の前から、高齢化による労働人口の減少などの課題があり、さらに追加する形で震災復興がある。

日中の経済関係について、近年、量的にも質的にも深化を遂げてきている。日本の対中国輸出は5倍、輸入は3倍。中国から日本への直接投資はここ数年、アパレルなどで買収が進んでいる。質的な深化という面では、1点目として中国が世界の工場から、消費市場になりつつある。日本企業への中国の進出も、製造業中心から、小売業や流通・サービスを含めた幅が広がっている。2つ目として、日中間の分業パターンが変化してきている。従来は日本で部品を作り、中国で組み立てていたが、最近は、一方向の分業ではなく、双方向かつ重層的に取り引きする水平分業に移行しつつある。

さらに、資源やエネルギーの制約については、世界全体として運営していくことが不可欠で、日中両国にとっても、大きな課題となる。日本では、大震災後のエネルギーの創出・保存の技術革新が強く求められており、中国では、グリーン経済、低炭素経済が叫ばれている。日中の経済関係の強化は、両国にメリットをもたらし、企業のビジネスチャンス拡大や生産性の向上にもつながる。

また、日中両国が中長期的な展望について、力を合わせて行くことが不可欠。日本は世界に先駆けて少子高齢化に直面しているが、今後中国も生産年齢人口の低下に直面する。社会保障や知的財産権の保護も含めたインフラの整備は欠かせない。金融面については、(1)日本の人民元へのニーズは高まるため、間接金融を通じた調達に加えて、株式などの資本市場の整備が必要(2)金融システムの危機にいかに迅速に柔軟に対応できるかが重要(3)物価安定による持続的な発展―が優先課題となる。(取材・編集/HY)

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携