映画「前任3」の興行収入14億元突破 予想外の大ヒットのワケは?

人民網日本語版    2018年1月15日(月) 16時20分

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2018年に興行収入10億元(約170億円)を突破する初めての作品が映画「前任3:再見前任(The Ex-file:The Return Of The Exes)」になるとは、誰もが予想だにしなかっただろう。その興行収入は10億元(約170億円)を突破した後も15億元(約255億円)への歩みを進め続けている。また、12月29日の公開から約2週間が経ったが、その上映率は依然として45%に達しており、1日あたりの興行収入が全体の6割を占めている。中国放送網が報じた。

同作品は監督も出演者も「大物」とは言えず、製作コストもわずか3000万元(5億1000万円)。前2作の興行収入も合わせて3億元(約51億円)で、ストーリーもごくありふれた都市を題材にしたラブコメディー。にもかかわらず、今の勢いが続けば、最終的には興行収入が20億元(約340億円)を突破し、中国の興行収入トップ10にランクインする可能性さえあり、業界全体を驚愕させる記録となる。もう一つおもしろいのが、口コミが二極化している点だ。情報コミュニティサイト・豆瓣のポイントが5.9ポイントと低調であるのに対して、チケット販売サイト・猫眼や淘票票などでは9ポイントと高得点になっている。同作品は果たして心を込めて制作された傑作なのか、ただ単にハチャメチャな展開なだけの駄作なのか、ネット上では舌戦が繰り広げられている。では、同作品の奇跡のような高い興行収入はどのように生み出されたのだろうか?

主役のカップルが倦怠期を迎え、些細なことからケンカ別れしてしまうことからストーリーが展開する同作品。その後、2人はそれぞれ吹っ切れたようなふりをして、新しい生活を始めるものの、内心では互いに相手を思い続けていた。しかし結局、再び2人が一緒になることはなく、最も分かり合える「他人」という関係になってしまうのだった。

田羽生監督は、「以前別れた彼女から微信(Wechat)に送られてきたメッセージからインスピレーションを得た。彼女は当時はあまり大人ではなかったかもしれないと謝罪しつつも、現在のような平凡な生活も決して悪くはなく、今でも付き合っていた当時のことをよく思い出すと書いていた。そして、最後に書かれていた『もしかしたら私は最愛の人とはすでに行き違ってしまったのかも』という言葉が僕の心を打ち、残念な気持ちでいっぱいになった」とした。

「前任」シリーズの第一作の評価は6.3ポイント、第二作は5ポイントで、興行収入は合わせて3億元ほどだった。このような大ヒットでも大コケでもない「並」のラブコメディ作品の第三作目であるだけでなく、「芳華(Youth)」や「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」などの正月映画に前後して公開されたため、当初映画館での上映率は16%にとどまっていた。しかし、公開2日目から、1日当たりの興行収入トップの座を維持するようになり、5日間で興行収入が5億元(約75億円)、10日間で10億元(約170億円)を超え、上映率も約45%まで上昇した。

中国電影報の張晋鋒・副編集長は、「一つの作品の興行収入が10億元(約170億円)の大台を突破したということは、すでに大ヒットの域に入ったということ。話題についていくために、さらに多くの人が映画館で同作品を見るだろう。ほとんどの大ヒット作品には、見る人や社会の琴線に触れ、社会的な話題になるという共通点がある。そして、多くの人が、この映画を見なければ、後れを取り、話題についていけず、みんなの会話に入れないという気持ちになる。『前任3』は単なる映画ではなく、そのような作品の域に入った」と分析した。

もう一つのおもしろい現象が、口コミが二極化している点で、情報コミュニティサイト・豆瓣のポイントが5.9ポイントと低調であるのに対して、チケット販売サイト・猫眼、淘票票などでは9ポイントと高得点になっていることだ。同作品は果たして心を込めて制作された傑作なのか、ただ単にハチャメチャな展開なだけの駄作なのか、ネット上では舌戦が繰り広げられている。「永遠に一緒になれないというストーリーに心が乱れた」と主役カップルに共感を覚えるユーザーや、「こんな残念な思いに駆られる恋は見ていてつらすぎる」とコメントするユーザーがいる一方で、豆瓣のユーザーは否定的なコメントが大半で、そのストーリーに対しては「ハチャメチャでがっかり」や「一体どこで泣けばいいのか全く分からない」といったコメントのほか、「この映画のせいで、映画市場に対する見方まで一変した」といった怒りのコメントすら寄せられている。

猫眼の分析を見ると口コミが二極化してる原因が浮かび上がってくる。例えば、「前任3」を見ている人のうち6割が女性であり、三、四線都市の人が50%以上を占め、一線都市の人は1割ほどにとどまっている。さらに、学歴が大卒以下の人が64.5%で、44%が25歳以下となっている。つまり、「小都市の若者たち」が同作品の観客層となっており、この観客層はこれまで常に「最もポテンシャルを備えている」とみられていた。

中国の映画館・沃美院線の北方地区責任者である趙勇経理は、「現在、映画1作品から映画市場全体にまで、寄与率を伸ばしているのが三、四線都市。『前任』のユニークなセリフなどは、欧米作品を見慣れている一線都市の観客にとってはあまり新鮮味がないかもしれないが、その習慣がない三、四線都市の観客にとっては、とても新鮮に感じられるのだろう」と分析している。

好きな映画のジャンルも、三、四線都市の観客と、一線都市の観客では明らかに異なる。前者は、芸術性の高い作品や海外の大作よりも、気軽に見れて、親しみを覚えやすい中国のアクション映画やコメディ映画などを好み、ラブコメディの「前任3」はそのような人の好みとちょうどマッチしたため、高い興行収入を上げるという奇跡を起こした。しかし、観客側のこうした好みの影響を受けて「前任3」のような作品は、すでに「映画」という本質から次第に乖離し始め、芸術としてよりも市場の客観的法則に従って興行収入を伸ばすようになっている。商業商品である「前任3」は、とても気軽に楽しめ、中国人が親しみやすく、共感を覚えることができるため、観客の多くが満足し、猫眼などのチケット販売サイトに高い評価を寄せている。一方、豆瓣における芸術性の高い作品を好むユーザーにとっては、同作品を芸術という視点から見た場合、物足りなさを感じることになる。このように、評価の観点が違いから、口コミの二極化が生じているとみられている。

張副編集長は、「誰もが他人にとっては元彼女であり、元彼氏であるという言葉があるように、ストーリーがしっかりしていて、若者たちの感情のツボをおさえることさえできれば、観客は、自分や知り合いまたは友人の身に起きたことだと感じ、共感を覚えることができる」と分析している。(編集KN)

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