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<巨象を探る>中国、インフレ退治へ人民元のさらなる引き上げに動く―中東騒乱の波及を懸念

配信日時:2011年2月22日(火) 5時56分
<巨象を探る>中国、インフレ退治へ人民元のさらなる引き上げに動く―中東騒乱の波及を懸念
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中国にとってインフレリスクの回避は最大の至上命題。食品価格の上昇により一般庶民の生活が圧迫され、不満の声は日増しに高まっている。中国政府がインフレ抑止策として志向しているのが人民元レートのさらなる引き上げだ。写真は陝西省宝鶏市の駅前風景。
中国にとってインフレリスクの回避は目下最大の至上命題だ。インフレは庶民の生活を直撃する。中国での今回のインフレの特徴は食品価格の上昇が顕著なこと。これによりエンゲル係数の高い一般庶民の生活が圧迫され、不満の声は日増しに高まっている。中国政府が志向しているのが人民元レートのさらなる引き上げだ。

チュニジアからエジプト、さらにはバーレーン、リビアまで、最近起きた独裁国家の騒乱は物価上昇による国民の生活疲弊が背景となっている。1989年の中国天安門事件も大幅インフレが大衆の蜂起のきっかけとなった。

中国経済は、昨年4四半期の実質成長率が前年比9.8%と、予想を大幅に上回る高い伸びとなった。さらに今年に入っても、最低賃金上昇による消費拡大、インフラ建設や民間設備投資の拡大などにより、高成長が続き、過熱気味。春節(旧正月=2月上旬)関連需要も絶好調だった。2011年の経済成長率も10%前後に達するとの見方が大勢だ。

一方で景気過熱からインフレ圧力は強まるばかり。消費者物価上昇率(前年同月比)は昨年11月に5.1%と警戒ラインの5%を上回り、その後も高止まりしており、今年1月は4.9%。中でも食品は10.3%増に上った。インフレの要因は、大幅賃金上昇、食料品価格の上昇、国際商品市況の高騰、米国など先進国の超金融緩和による過剰な資金流入―など複合的。今後も、冷害、干ばつなど天候不順や国際的投機マネーの流入が物価高騰に拍車をかける恐れがある。ニンニク、ショウガなど一部農産物価格はさらに上昇、インフレ急進のリスクは高まる一方だ。

中国政府はインフレ動向に神経を尖らしている。物価高騰を抑制するため中国人民銀行は昨年10月、12月に続き、2月8日に3回目の利上げを断行。さらに20日、預金準備率を0.5%引き上げた。しかし、先進各国が超金融緩和を継続する中での利上げは世界の余剰資金の中国への集中を加速させ、物価上昇に拍車をいかける恐れが大きい。

そこで、中国政府が志向しているのが人民元レートのさらなる引き上げ。インフレ抑制には輸入物価下落や外国資金流入抑制につながる為替レート引き上げが有効だからだ。中国事情通は「中国政府は、今後年率で少なくとも6〜7%程度の切り上げは容認する」と見ている。

実際、人民元の対ドルレートは21日の上海外国為替市場で過去最高値を記録。中国人民銀行(中央銀行)が、この日の人民元の基準値を1ドル=6.5705人民元と、3日連続で過去最高値に設定したことが背景となった。人民元は2010年6月のドルペッグ(連動)制廃止以降3.97%上昇している。

ただ、人民元の引き上げは、中国製品の輸出競争力をそぎ、もう一つの至上命題「経済の持続的拡大」を危うくするリスクがある。中国は高い経済成長を実現することによって、増えたパイを13億人に分け与え、庶民の不満を抑えているからだ。まさに「中国にとって社会の安定と経済成長は車の両輪であり、走り続ける必要がある」(元駐中国日本大使)わけで、中国政府は大きなジレンマに陥っている。

地方政府の開発融資が焦げ付く恐れ

庶民の不満のもう一つの矛先は住宅問題だ。昨年からマンションなど不動産価格の高騰が続いている。しかも所得格差が拡大し一般庶民は大都市での住居購入が困難になりつつあり、上海や北京では住居所持をあきらめて地方に就職口を探す労働者が増大している。中国政府は価格高騰を抑制するために、マンション保有規制など相次ぐ抑制策を打ち出し、一部大都市で不動産保有税の導入を開始。低所得者向け住宅の建設に注力しているが、旺盛な需要に追いつかず、「焼け石に水」の状態だ。

不動産はまさにバブルと言っていい状態。地方政府が工業団地やショッピングセンターなどの開発プロジェクトを推進するために設立した融資プラットフォーム会社向け貸し出しが巨額に達しており、その焦げ付きの恐れが囁かれている。地方政府の開発競争バブルがはじけることが目下の最大のリスク要因というわけだ。中国のインフレ問題から目が離せない。<巨象を探る・その9>
<「巨象を探る」はジャーナリスト・八牧浩行(株式会社Record China社長・主筆)によるコラム記事。=Record China>

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