<新コラム「巨象を探る」>アジア・パワーで活路は開ける―日本経済

八牧浩行    2010年1月18日(月) 6時39分

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2010年1月、日本経済の先行きに対する悲観論が高まっているが、果たしてそうだろうか。日本は世界で最も人口が多く経済成長が著しいアジア地域の中核的な存在であり、そのパワーを活用できる。写真は昨年12月COP15開催に合わせて温暖化防止を訴える全国の大学生ら。

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2010年1月、日本経済の先行きに対する悲観論が高まっているが、果たしてそうだろうか。世界経済が基調的に回復軌道にあることに加えて、日本は世界で最も人口が多く経済成長が著しいアジア地域の中核的な存在であり、そのパワーを活用することができる。

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2010年のGDP見通しでも、欧米や日本がようやく0.3−1.7%とわずかな成長にとどまるのに対し、中国9.0%、インド6.4%、ASEAN5カ国4.0%と勢いは加速する。これらの国は中国の13億人を筆頭にインド12億人、ASEAN5カ国5億人と多くの人口を擁し、米国やユーロ圏をはるかに上回る。まさに、アジアパワー炸裂といったところだ。今や世界はアジアの時代であり日本は経済的な連携を深めるべきだ。

実際、日本の貿易構造は「アメリカがくしゃみをすれば日本は風邪をひく」といわれた、従来の対米中心から大きく変化している。09年1−9月の日本の貿易総額に占める米国の比率は13.5%。東西冷戦終結後の90年の27.4%から半減した。これに対し、アジア地域は49.4%と貿易総額の半分を占める。中国は20.5%で、国別で米国を大きく上回り、断トツのトップだ。

中国のGDPが2010年に日本を上回るのは確実。米シンクタンクは2040年には米国を凌駕すると推計している。仏証券会社の予測では、このままの経済成長率格差と為替レートが続けば、2020年に米国を追い越すとされている。中国の銀行、保険、石油、海運企業などの多くが世界最大級のグループの仲間入りを果たし、中国は米国に代わる世界最大の経済国家に成長するという。

2009年の株価の動きを主要市場別に見ると、日経平均の上昇率が1ケタ台にとどまったのに対し、中国、インド市場は7割以上も上昇した。東京証券取引所の2009年の株式売買代金が、初めて上海証券取引所に抜かれた。高成長を背景にした中国の投資熱を裏づけており、投資低迷にあえぐ東証が長く保ってきたアジア1位の座を明け渡した。

さらに中国の同年の輸出額はドイツを抜き、初めて世界トップに躍り出た。「世界の工場」としての存在感が一段と高まっている。

日本は供給過剰に陥っており、需給ギャップは6.7%、年間40兆円にも達する。円高によるマイナス要因もあり、物価下落と景気悪化が同時進行するデフレスパイラルに陥っており、加えて人口減少という宿命的な成長阻害要因が襲う。こうした苦境を乗り越えるには、やはり近隣のパワーを最大限活用して需給ギャップを埋め合わせることだ。

中国の構造問題是正に日本の技術・ノウハウが生きる

中国では、高度成長が長く続いた上に、超大型景気対策が講じられたため、過剰設備や外需依存体質など構造的な問題が山積。胡錦濤政権は持続的成長を維持するためには内需中心の緩やかな成長により格差を是正する「調和の取れた社会」への転換を迫られている。臨海部に比べ経済成長が鈍く発展から取り残されたといわれた内陸部が猛烈な経済成長過程にある。

さらに中産階級層が急増しており、日本からの投資ニーズも高い。その実現には医療、保険、金融、流通などサービス分野の先進的なノウハウが不可欠。こうした、分野でも、日本企業の豊富なノウハウと経験が生きてこよう。

例えば環境。中国は国際世論の高まりや実際の公害被害拡大などに対応するため、2020年までにGDP1単位当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を05年比で40−45%削減する新たな目標を掲げ、環境保全に全力を注入する方針に転じた。ところが、目標達成に不可欠な技術力やノウハウが乏しいのが現実。そこで、排水浄化や水質保全、土壌汚染対策など環境関連技術では世界トップクラスで経験も豊富な日本企業に熱い期待が寄せられている。

日本はもともとASEANに中国、韓国、インドなどを加えた地域の牽引役であり、これら地域と緊密に連携すれば大きな飛躍を期待できる。カギは成長戦略策定と技術革新を促す政策運営だ。(筆者・八牧浩行)<巨象を探る・その1>

<「巨象を探る」はジャーナリスト・八牧浩行(株式会社Record China社長)によるコラム記事。2010年1月にスタート。1か月に2回のペースで配信する=Record China>

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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