<直言!日本と世界の未来>韓国平昌五輪への北朝鮮参加機運を歓迎=「南北融和」で米朝軍事衝突回避を―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2018年1月7日(日) 5時0分

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韓国・平昌冬季五輪を機に、朝鮮半島で南北融和が進むとのニュースが飛び込んできた。韓国と北朝鮮が交信する板門店の「南北連絡チャンネル」が再開されるなど、緊張緩和につながる動きが出ている。

天候に恵まれた穏やかな正月だったが、気がかりな材料は一つ。無謀にも核・ミサイル開発を続ける北朝鮮金正恩独裁政権と、「あらゆる選択肢を排除しない」として強硬姿勢をとる米国トランプ政権が鋭く対立、一触即発の危機に直面していることである。軍事衝突が起きれば、多くの人命が奪われ、成長センターとして期待される東アジアはもちろん世界中の損失は計り知れないからである。

こうした中、韓国・平昌冬季五輪を機に、朝鮮半島で南北融和が進むとのニュースが飛び込んできた。韓国と北朝鮮が交信する板門店の「南北連絡チャンネル」が再開されるなど、緊張緩和につながる動きが出ている。北朝鮮の平昌冬季五輪への参加問題も協議するという。

金正恩氏は新年の辞の中で、平昌五輪に言及し、「選手団を派遣する用意がある。南北当局が至急に会うこともできる」と五輪参加に前向きな姿勢をみせた。18年を「民族史に特筆すべき年として輝かせるべきだ」とも発言、南北関係改善に意欲を示した。北朝鮮が国際社会と対話に乗り出す意思を示したとも受け取れる。韓国の文在寅大統領は早速、金正恩氏の発言を歓迎し、南北対話を速やかに実施するよう指示したという。

注目された米国の反応もまずまずのようだ。国務省のナウアート報道官が原則的に反対しない姿勢を示し、トランプ大統領はツイッターで、「制裁や他の圧力が大きな影響を与え始めている」とし、「ロケットマンが初めて韓国と対話をしたがっている」と投稿。一連の動きについて「良いニュースかもしれないし、そうでないかもしれない。いずれ分かる」と期待感も表明した。米国務省は「北朝鮮への一致した対応について韓国と密に連携している」として、米韓の足並みをそろえる姿勢を示している。

中国外交部の耿爽副報道局長は北朝鮮が平昌冬季五輪への代表団派遣に言及したことについて、「前向きなメッセージを出したことに留意している。北朝鮮と韓国が関係を改善することを歓迎する」と評価したとされる。

新年に飛び出した金正恩氏の「融和的な発言」について、韓国や米国の専門家やメディアなどは、米韓関係にくさびを打ち込んで距離を置かせつつ、最終的には米国との直接対話で体制保証を取り付けるための手段との見方もでているようだ。対話が進み、軍事衝突の回避につながることを切に望みたい。

北朝鮮が核・ミサイル開発を続ける中で、日本を取り巻く東アジアの安保環境は悪化しており、防衛装備を積極的に拡充するのはある程度やむを得ない。ただ財政赤字が続く中で、経済浮揚、公共投資、教育、福祉など国民の生活向上に回すお金が圧迫され続けるのも、由々しいことである。北朝鮮が日本はじめ近燐国に脅威を与え、その結果、軍需産業が恩恵を受けていることは憂慮すべきことである。その意味で朝鮮半島の非核化が進み、軍事費に膨大な資金を投入する「脅威と軍事費増大の悪循環」が回避できればよいと考える。

北朝鮮からも近い平昌で2月8日から開催される冬季五輪に同国選手が参加することになれば、喜ばしいことである。平和の祭典オリンピック・パラリンピックを通じて、南北の人々が交流することを期待し、軍事的な衝突を回避していただきたいと祈るような気持でいる。

オムロンのハンドボール部オーナーを務めていた時、ハンドボール日本リーグ開催地責任者会議で講演する機会があり、企業がスポーツチームを持つ意義などについて話したことがある。目的は、従業員の一体感の醸成、士気高揚、社会貢献など様々だが、これらは国レベルでも同様のことと考える。スポーツに国境はない。南北朝鮮の同胞が平昌五輪に参加して、友好の火を灯すよう願いたい。

そして北朝鮮の参加を含め、この機会に米朝間のわだかまりを消し、本当に平穏な年になるよう、心より祈りたいと思う。

<直言篇36>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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