<映画の中のチャイナ>リアル感乏しい中国人像、日本の中国人観はこの程度?〜「ハゲタカ」

Record China    2009年7月11日(土) 15時50分

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09年7月、「企業買収をテーマにした壮絶なマネーゲームを描いて大反響を呼んだ」という映画「ハゲタカ」。残留孤児、派遣切りなど大向こう受けするキーワードを絡ませているが…。写真は中国の政府系ファンド、中国投資有限責任公司(CIC)。

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2009年7月、「企業買収をテーマにした壮絶なマネーゲームを描いて大反響を呼んだ」(シネマトゥデイ)というNHKテレビのドラマ「ハゲタカ」の劇場版。

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日本のバブル経済崩壊に伴う混乱を舞台にしていたドラマから数年後、「閉鎖的な日本のマーケット」に絶望して、海外のリゾートホテルで優雅な隠遁生活を送っていた「天才ファンドマネージャー」鷲津のもとへ、日本有数の大手自動車会社を買収の危機から救ってほしいとの依頼が舞い込む。対抗する相手は中国大陸系の巨大ファンドだ。

いまでこそ「もしかするとあるかも」という設定だが、20年以上前の中国を知る者にとっては隔世の感がある。

東南アジアにおける華僑資本というのは昔から存在するが、まさか共産主義の中国が企業買収という資本主義経済の最前線で活躍するまでに変身するなんて。

それも、日本の基幹産業である大手自動車メーカーに大陸系ファンドが買収を仕掛け、日本人ファンドマネージャーが対抗する。中国はすでに2005年、アメリカを代表するハイテク企業・IBMのパソコン部門を買収して世界に衝撃を与えたが、それでも、より以上に巨大な資本を必要とする自動車産業の買収という設定は、欧米が相対的に地盤沈下した最近だからこそ初めてリアル感が増している。

さらに、映画に登場するアメリカの証券会社が逆に強大な資金力を誇る中国資本に支援をあおぐ辺りは、昨年来の金融危機あってこその現実感だろう。その意味では経済分野で日中が戦う現代世界という舞台設定はとてもおもしろく、テレビドラマの時のキャストに加え、変な迫力がある自動車会社の社長役・遠藤憲一など役者さんはそれぞれ雰囲気があって良かった。

少し残念だったのが、ファンドの中心人物だった野心的な中国人・劉一華の扱い。中国語も英語もさまになる玉山鉄二という魅力的な俳優を起用し残留孤児、戸籍の盗用、派遣切りといった大向こう受けしそうなキーワードを絡ませているが、どうも薄っぺらい。天才・鷲津にかかって最後には…、というシナリオはいいとして、詳しくは書かないが、最後の成れの果ては一体なんだろう。

スラム街でもあるまいに、首都・東京のビジネス街にある公園で刺された人間をだれも助けようとせず、居合わせたホームレスたちは飛び散った財布から金を奪って逃げるだけ…。これがかつて治安の良さを誇った日本の近未来ということなのだろうか。そういえば中国資本が一方の主役なのに、主要キャストには中国人は使っていない。

日本の中国人観がこの程度と言ってしまえばそれまでだが、中国には輸出しにくいであろうドメスティックな映画に仕上がっている。

蛇足だが、「現代日本の未曾有の金融危機を反映したリアルな脚本は見逃せない」という紹介がネット上にある。しかし、本筋ではないが、テレビドラマの段階で描かれていた人間味が、映画では「天才」が強調されすぎる辺りは、「サラリーマン」からいつの間にか「スーパー社長」に出世したコミックの島耕作を彷彿とさせる。

<映画の中のチャイナ01>(文章:kinta)

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