日本の科学研究は予算削減で実力低下、このままではノーベル賞受賞者減少も―中国紙

人民網日本語版    2017年11月10日(金) 20時0分

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英国の科学誌ネイチャーのサイトがこのほど、日本の科学界では複数の大御所が自国の科学研究をとりまく状況が悪化を続けていることを懸念していると伝えた。資料写真。

英国の科学誌ネイチャーのサイトがこのほど、日本の科学界では複数の大御所が自国の科学研究をとりまく状況が悪化を続けていることを懸念していると伝えた。研究予算の削減と基礎研究の衰退が日本の科学研究の競争力を大きく低下させており、日本は既存の科学技術強国や徐々に頭角を現してきた科学技術界の「新星」(中国など)との競争で優位性を失いつつあるというのだ。科技日報が伝えた。

▽研究予算削減が科学研究の停滞を招く

安倍首相はこれまでずっと、政府は革新(イノベーション)を重要なアジェンダに組み込むとしてきた。安倍首相は10月1日に京都で開催された科学技術界のリーダーが集まる国際会議でのあいさつで、「新技術の発展を制約する政策や規制を緩和することで、日本をイノベーションの揺籃にする」などと述べている。

安倍首相の熱心な言葉とは裏腹に、実際には2012年に第2次安倍内閣がスタートしてから日本の科学研究予算は5%以上削減された。過去10年ほどの間に、大学の研究予算は毎年約1%ずつ削られ、さきの総選挙では憲法改正と消費税率引き上げが主な争点となり、科学研究についてはほとんど取り上げられなかった。

豊橋技術科学大学の学長で政府のシンクタンク・日本学術会議の第27代会長も務めた大西隆氏は、「私とたくさんの科学技術界の関係者は、予算の削減は日本の科学研究成果や日本の大学のグローバルランキングをどんどん低下させる『黒幕』だと考えている」と述べた。

今年8月に同誌のサイトに発表された研究成果は、ここ数年の日本の科学技術関連の論文数の世界での割合を調査したものだった。その結果、2005年には世界の主要科学誌で日本の論文は8.4%を占めていたが、15年には5.2%に低下し、論文数でみても、15年の発表数は05年に比べて大幅に減少したことがわかった。01年以降、日本政府が科学研究予算を削減したため、科学研究の停滞と劣化を招いたのだという。

世界最大の書誌データベース・スコーパスが提供するデータをみると、過去20年間には、日本の論文引用度指数が停滞して上昇しなくなった一方で、他の主要国の多くは関連データがますます上昇していることがわかる。

米大手情報企業トムソン・ロイターが16年5月27日に発表したデータをみると、引用度指数で上位1%に入る論文ランキングのうち、中国は4位、上位3位には米国、英国、ドイツが並んだが、日本は10位に後退した。

▽一流大学を育てるのは資金だけではない

トップクラスの研究型大学をさらにレベルアップさせるため、日本政府は改革を実施し、大学ごとの研究や教育の重点による分類を行い、成果に基づいて予算を分配してきた。政府は最先端の研究機関に世界から最も優秀な学生が集まることを期待し、最先端の研究者や教員を招聘してきた。

科学技術政策が専門の日本の政策研究大学院大学(GRIPS)の角南篤教授はこうした狙いがあることを認めつつ、「こうした改革で成功を収めたいなら、政府は研究予算を増やすべきだ」と指摘した。

GRIPSのもう一人の科学技術政策の専門家・永野博非常勤講師は、「資金を投入するだけでは十分でない。こうした大学を一流大学に育てたいなら研究と教育の重点を決定する権限をより多く大学にもたせなければならない。目下の政策は行動と目的がやや『ちぐはぐ』だという印象が否めない」と述べた。

▽基礎研究が足を引っ張り将来にも影響

日本政府が大学システムを調整しようと考えたそもそもの狙いは、学術界が社会や産業界のニーズによりよく応えるられるようにすること、そうして民間部門が研究開発投資を増やすよう奨励することにあった。研究者は一般的に学術界と業界との融合協力を認めるが、基礎研究への支援が手薄になると考える人もいる。大西氏は、「政府は基礎研究の発展に専心し、そこから応用科学のためによりよく創意と支援を提供するべきだ」と指摘した。

前出の科学界のリーダーたちは、日本の研究状況の将来にも大きな懸念を抱くという。日本の科学技術振興機構(JST)の浜口道成理事長は、「人口の高齢化により、国内の労働力が科学、技術、革新の歩みについていけなくなっている。政府は早急に政策を制定し、女性と外国人がより多く科学研究分野に参入するよう奨励するとともに、博士課程の大学院生を増やすべきだ。大学院生の数は03年以降で18%減少した」と述べた。

科学研究分野で活躍したいと考える学生たちも、卒業すれば失業者になること、科学研究はそれほどよい選択ではないことに気づいている。若い科学者は研究環境の整った大学や国立の研究機関にとどまりたい、安心して研究に専念したいと考えるが、現実はそう甘くない。予算の削減により日本の多くの大学では、終身雇用の研究ポストが姿を消し、若い研究者が定年まで勤められるポストを手に入れる可能性はますます低くなった。07年から13年の間に、短期間の共同研究で採用される准教授は2倍以上増えた。

16年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏も、「若い研究者の現在の境遇は日本が将来ノーベル賞を受賞する確率を引き下げるものでもある」と警告した。21世紀に入ってから、日本のノーベル賞受賞者数は米国に次ぐ世界2位だが、大隅氏は、「この記録は維持できないだろう」と予想した。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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