だがこうした状況に徐々に変化が起きており、それは米ウォール街が人民元リスクの回避に失敗した真の原因でもある。しかし実際のところ、人民元の対ドルレート上昇は、変化の主要な局面ではない。2017年に入ってから、人民元の対ドルレートは累計7.55%上昇し、対ユーロレートの14%上昇を下回っただけでなく、対日本円レートの8.49%上昇、対スイスフランレートの7.93%上昇も下回った。だが注目に値するのは、こうしたデータはいずれも従来の国際金融市場の局面で起きていることであり、いずれも米ドル・米ドル建て資産とつながった「盤面」の上で起きていることだ。この盤面の外から眺めると、事態は違ったものにみえてくる。16年7月末現在、人民元が越境取引の決済で使用されるようになってから7周年を迎えた時、越境取引の人民元建て決済額は累計40兆元(1元は約16.9円)だったが、17年8月末には168兆元という驚異的な数字に達した。こうした現象が起きたことは、「人民元の海外進出」の成果とみなされている。この現象を理解するには、2つの事実に関連づけて考える必要がある。中国と「一帯一路」(the Belt and Road)参加国との貿易の増加ペースが中国の対外貿易全体の増加ペースを大きく上回ったこと、また中国と新興貿易パートナーとの人民元建て決済の量がより速いペースで増加したことだ。
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