「すみません」ばかり練習させる日本人の先生に不満爆発!しばらく黙り込んだ先生は…―中国人学生

日本僑報社    2017年7月9日(日) 12時20分

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何かを学ぼうとする時、単調な基礎練習をおっくうに感じてしまうことはよくある。上海理工大学の洪貞さんは、「カリスマ教師」と言われた日本人の先生との出来事について次のようにつづっている。

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何かを学ぼうとする時、単調な基礎練習をおっくうに感じてしまうことはよくある。上海理工大学の洪貞さんは、「私を変えた、日本語教師の教え」をテーマにした作文の中で、「カリスマ教師」と言われた日本人の先生との出来事について、次のようにつづっている。

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「来た、来た、新しい先生が!」とクラスメートが大きな声で叫んだ。隣の王さんが耳打ちしてきて、「ねえ、ねえ、聞いた?今度の先生は凄いのよ。名門大学の卒業生だし、カリスマ日本語教師なんだって」とささやいた。「そう、よかったわ」と私は携帯をいじりながら、無愛想に返事した。その会話が終わるや否や、うわさの主である新しい先生が入ってきた。年齢は40歳ぐらいの男性で、やさしそうな顔をしていた。

それほど期待していたこの先生の授業だったが、2日ぐらいで「これで本当にカリスマ日本語教師なのかなあ」と思うようになった。というのも、この先生の教え方はこれまで受けた日本語の授業と全然違うのだ。文法なんか一つも教えてくれないし、難しい単語も一切使わない。ただ、オウム返しのように簡単なセンテンスの復唱ばかり。たとえば、「すみません、トイレはどこですか」「すみません、銀行はどこですか」など。

この先生は簡単なセンテンスを作っては、何度も読ませ、そしてちょっとセンテンスの内容を変えて、また何度も復唱させるのだった。そのおかげで、ルームメートの王さんが夜中に「すみません、トイレはどこですか」と寝言を連発していたこともあった。それで、私たちの間ではこの先生に「すみません先生」というあだ名をつけた。

3日目の授業の時、この先生はまた、いつも通り、簡単なセンテンスの繰り返しを始めた。午後最初の授業だったから、眠気が襲ってきた。教室を見回すと、携帯をいじっている学生もいた。そのとき、「すみません」というセンテンスがなぜか頭をよぎって、ついに我慢できなくなり、私は爆発した。

「先生、毎日毎日、こんな練習ばっかりするんですか。すごくくだらないじゃないですか。ホント、変な先生で変な教え方だわ」と日ごろの不満が口をついて出た。つられて、隣の王さんも「そうだわ。私、この授業のせいで『こんにちは』というべきときに、『すみません』と言っちゃったわ」。「そうだよ。こんな練習、どこに意味があるんだよ」と別のクラスメートの李さんがさらに言った。

私たちの剣幕に、「すみません先生」はしばらく黙って考え込んでから、話し始めた。「皆さん、清水の舞台のことを知っていますか?清水の舞台は高さ約12メートル、床には410枚以上のヒノキの板が敷き詰められていて、広さ約190平方メートルです。この舞台は何で支えられているか、知っていますか?これほど広い舞台はたった78本のケヤキで支えられているのです。清水の舞台の柱になるには、ケヤキは400年の生長期間が必要だそうです。何事も基礎、土台作りが大事です。78本の樹齢400年の柱の支えがあってこそ、日々多くの参詣者で賑わうこの舞台を何百年間もしっかりと支えてきたわけです」。

ちょっと間をおいて、先生はまた静かな口調で続けた。「皆さんは、この間の練習は単調で、簡単すぎると思うかもしれませんが、決して簡単なことではありません。ベテランのアナウンサーでも番組が始まる前にスタジオで50音を読む発声練習をしているそうです。皆さんも『すみません』のような簡単な言葉をマスターして、文化交流の柱になってほしいのです」。見るともなく窓の外を見たら、小さな木の苗が目に入ってきた。私はまた本を取り出して、「すみません」の練習を始めた。(編集/北田

※本文は、第十二回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「訪日中国人『爆買い』以外にできること」(段躍中編、日本僑報社、2016年)より、洪貞さん(上海理工大学)の作品「私を変えた『すみません先生』の教え」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

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