人気の高い日本ドラマの特徴は…―中国メディア

人民網日本語版    2017年5月11日(木) 13時10分

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日本の質の高いドラマを表彰する「第7回 コンフィデンスアワード・ドラマ賞」の各賞がこのほど発表され、「カルテット」が作品賞、脚本賞、主演女優賞など最多5賞を獲得した。

日本の質の高いドラマを表彰する「第7回コンフィデンスアワード・ドラマ賞」の各賞がこのほど発表され、「カルテット」が作品賞、脚本賞、主演女優賞など最多5賞を獲得した。コンフィデンスアワードの審査員は、ドラマに関する有識者とマスコミのドラマ・テレビ担当者から構成されている。「カルテット」は、多くのドラマファンが「冬ドラマ」の中で最もおもしろかったとしており、今回は専門家のお墨付きも得た形になり、期待通りの受賞となった。(文:張禎希。文匯報掲載)

2005年に創設され、今回で7回目を迎えたコンフィデンスアワード・ドラマ賞は、近年の日本のドラマの状況を見定める最も良い窓口となっている。「民王」、「重版出来」 、「逃げるは恥だが役に立つ」、「カルテット」などのこれまで「作品賞」を受賞したドラマを見ると、現実に焦点を当て、不安と向き合っているものの、終始あたたかいムードを保っているというのが、人気の高い日本ドラマの特徴であることが分かる。

〇現実と向き合わせてくれるドラマこそが本当の「癒し系」

坂元裕二が脚本を手掛けた作品がコンフィデンスアワード・ドラマ賞で作品賞を受賞したのは「カルテット」が初めてではない。昨年の「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」も16年1月期(1〜3月に放送されたもの)を対象にした第3回で作品賞を受賞した。後者は、視聴率で大苦戦したにもかかわらず、口コミが非常に高いという現象を起こし、多くのメディアの間で話題となった。そして、今年の冬ドラマ「カルテット」も、「口コミは高いが視聴率は低い」という現象を引き継いだ。業界関係者は、この2作品が大衆娯楽市場に「なじんでいない」のは、あまりに現実的過ぎて、重苦しい雰囲気が漂っているからと分析している。

実際には、田舎の若者が味わう挫折感、世代の違う親子の間にある溝、結婚生活における夫婦の役割分担など、具体的でダークな現実の話題が、夢物語のような純愛に取って代わるようになっており、近年ヒットする日本ドラマの代表格となっている。

同じ音楽をテーマにしたドラマでも、10年前の 「のだめカンタービレ」と比べてみると、「カルテット」は大きく異なる。前者は、上野樹里や玉木宏など、人気俳優が起用され、奮闘する天才音楽家の恋愛を描いている。一方、「カルテット」では、「天才」と「純愛」という夢物語の要素はなく、才能にはめぐまれていないものの、音楽をこよなく愛する若者4人が集結し、「夢のある三流の音楽家は四流でしかない」ということを自覚しつつも、音楽を通しておもしろみに欠けた人生を充実させることに励み、非常に細かな部分で互いに寄り添い合い、ぬくもりを感じようとする。

「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」では、「平凡な苦しみ」にスポットを当てている。同ドラマは東京を舞台に、田舎から上京した若者が大都市で奮闘する過程で、悩み困惑する様子を描いている。幼少期に母を亡くしているヒロインの杉原音は子供のころから、養父母と暮らすというストレスの多い環境で育ったものの、明るく前向きに生き、大人になってから上京して夢をかなえるために奮闘していく中で失敗と挫折を経験する。ドラマのストーリー全体に「挫折感」が漂うものの、失敗を経験した人が厳しい現実の中でちょっとした幸せを見つけるというのは、恵まれた環境で育った人が成功するよりも、人の心を打つものだ。

第6回コンフィデンスアワード・ドラマ賞で作品賞を受賞した「逃げるは恥だが役に立つ」は、「逃避」をテーマに掲げた作品であるものの、見る人の心をとらえたのは、社会問題から「逃げない」姿勢だった。そして、「雇用主と従業員」という関係の契約結婚という一見ありえない関係が描かれ、結婚を嫌がる今の若者の心理状況や、これまであまり目に留められていなかった女性の家事の価値という問題に迫っている。

〇社会の現状が垣間見える職場

職場を舞台としたドラマも日本ドラマにおいて高い実力を誇るジャンルだ。「白い巨塔」や 「半沢直樹」などが、各業界の内部に潜む理不尽な実態や暗黙のルールに着眼点を置いてストーリーが展開されたのとは異なり、近年の職場を舞台とした日本ドラマは、社会の現状が垣間見える、「窓口」となっている。しかし、「仕事というのは、ロボットのように冷たく無情なものではなく、温かみを持ち、人生の虚しさを埋めてくれるもの」というメッセージに変わりはない。そして、ゆっくりと丁寧に仕事をする職人精神を表現し、焦らずにバランスを取りながらコツコツと生きるよう見る人を励ましている。

第1回コンフィデンスアワード・ドラマ賞で作品賞を受賞したのも職場が舞台のドラマ 「民王」。奇想天外なテーマの同ドラマでは、ひょんなことから、総理大臣の武藤泰山と、息子で大学生の翔の人格がある日突然入れ替わってしまう。外交マナーや国際提携の慣例などが随所に織り交ぜられているものの、同ドラマで主に表現されているのは、複雑な父親と息子の感情だ。人格が入れ替わって以降、父親は仕方なく息子に政治の知識を詰め込もうとする一方、息子は父親の仕事の大変さを身をもって感じる。そして、父親も息子の穏やかな性格がとても貴重であることに少しずつ気づく。職場が舞台のドラマといっても、そこには親子間の思いが詰まっており、それがコミカルに表現されている。

第4回コンフィデンスアワード・ドラマ賞で作品賞を受賞した「重版出来」は、日本の漫画産業にスポットを当てており、デジタル化の波が押し寄せる今、あえて従来型の出版業界の「代弁者」となった。同ドラマでは、先輩漫画家の三蔵山龍がふさぎ込んでいた新人漫画家の中田伯に、「このおにぎりを1個作るのに、どれだけの水が使われているか知っていますか?米作りから考えると270リットルもの水が必要です。それを『バーチャルウォーター』と呼ぶそうです。その水に ほとんどの人が気づかないですが、見えない水を想像したほうが世界は広がる」と語る名言があった。同ドラマがスポットを当てていたのが、漫画業界で見過ごされている「バーチャルウォーター」。句読点一つのために何時間も頭を悩ますまじめな編集者、真剣に本を並べる本屋のスタッフ、営業で走り回り、革靴の靴底がすり減ってしまった営業マン。漫画やドラマを見る人は、それ自体のおもしろさに感謝すると同時に、見えないところで黙々と努力してくれいている人たちへの感謝も忘れてはいけない。(提供/人民網日本語版・編集KN)

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