<コラム>今こそ夜の平壌外交を、北朝鮮情勢を判断するならあの集団に注目せよ

北岡 裕    2017年4月17日(月) 18時30分

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金日成主席の誕生日、太陽節(4月15日)が過ぎ、偶発的な衝突から情勢が急展開する可能性はいまだ続くが一つ山場を越えた感がある。私が注視していたのは平壌に駐在する外国人の動きだ。写真は水タバコをホテルのバーに持ち込むエジプト人エンジニア、筆者撮影。

金日成(キム・イルソン)主席の誕生日、太陽節(4月15日)が過ぎ、偶発的な衝突から情勢が急展開する可能性はいまだ続くが一つ山場を越えた感がある。私が注視していたのは平壌(ピョンヤン)に駐在する外国人の動きだった。彼らが帰国を始めたら情勢は本格的に危ないと思っていた。

実は少なくない数の外国人が中長期間、平壌に滞在している。以下、簡単に整理してみる。

1)大使館関係者(北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国は約160カ国と国交がある)。

2)平壌科学技術大学の米国人教員。

3)エジプトの通信会社・オラスコム・テレコム社のエンジニア。エジプトと北朝鮮は中東戦争以来、非常に関係が深い。

4)その他。

2)の平壌科学技術大学は、英語のみでIT系のエリート教育を行う大学。米国人をはじめとする多くの外国人教員がいる。また、北朝鮮の携帯電話事業サービスを提供しているのは高麗リンク社。同社は北朝鮮の逓信省とエジプトのオラスコム・テレコム社(以下、オ社)との合弁であり、オ社は平壌の普通江(ポトンガン)ホテルにオフィスを構え、約20名のエジプト人エンジニアが常駐する。

平壌に連絡事務所を早急に設置する必要を強く感じる。北朝鮮との交渉の窓口としてだけではなく、平壌駐在の外国人との交流と情報交換のためにも。彼らが帰国を急ぎ始めたことが分かれば、母国や北朝鮮側から何らかの指示、情報を得たと考えられ情勢判断の一材料となる。

オ社のエンジニアとは2013年、15年、16年の訪朝の際、普通江ホテルのバー「銀河水」で毎晩のように話した。主に20〜30代の彼らは数カ月交代で平壌に駐在する。バーではビールを飲み、水タバコを吸いスマホとスピーカーをつなぎ洋楽を流していた。「アルコールは駄目だろ!」と突っ込むと「おれはバッドムスリムだぜ!ニッポンのフレンドよ」と笑うお茶目で陽気なやつらだった。聞くと休日はホテルの部屋でDVDを見て過ごしたり、スカッシュやプールで汗を流したりするという。彼ら専用の自動車もあるのでヘルスセンター「蒼光院」にでも行くのだろうか。

また平壌駅前にあるピョルムリカフェはスイスの技術で作った国産チーズがおいしく、ブラジル大使が足しげく通う(実際に10年に店で会った)。北朝鮮で外国人の行動の自由には制限があるので、自然と外国人の集まる場所は限られてくるはず。そこに顔を出し得る情報と人間関係は非常に有益で、情勢を判断する材料となるはずだ。一次情報に近づく努力の必要性が高まっている。

■筆者プロフィール:北岡裕

76年生まれ。東京在住。過去5回の訪朝経験を持つ。主な著作に「新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮」。コラムを多数執筆しており、朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」では異例の日本人の連載で話題を呼ぶ。講演や大学での特別講師、トークライブの経験も。

■筆者プロフィール:北岡 裕

1976年生まれ、現在東京在住。韓国留学後、2004、10、13、15、16年と訪朝。一般財団法人霞山会HPと広報誌「Think Asia」、週刊誌週刊金曜日、SPA!などにコラムを多数執筆。朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」でコラム「Strangers in Pyongyang」を連載。異例の日本人の連載は在日朝鮮人社会でも笑いと話題を呼ぶ。一般社団法人「内外情勢調査会」での講演や大学での特別講師、トークライブの経験も。過去5回の訪朝経験と北朝鮮音楽への関心を軸に、現地の人との会話や笑えるエピソードを中心に今までとは違う北朝鮮像を伝えることに日々奮闘している。著書に「新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮」(角川書店・共著)。

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