<コラム>ガイドをしていて実感、中華圏の女性はなぜ「桃」に執着するのか?

小林 晶子    2017年4月15日(土) 14時10分

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2016年7月6日〜9月24日の2カ月半の間に、フルーツ狩りのガイドを7回もした。お客さんの内訳は、香港人4組、台湾人2組、マカオ人1組だ。私の好きな中国人が1組もいなかったのは少し残念。筆者撮影。

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2016年7月6日〜9月24日の2カ月半の間に、フルーツ狩りのガイドを7回もした。お客さんの内訳は、香港人4組、台湾人2組、マカオ人1組だ。中国人が1組もいなかったのは少し残念。

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このツアーは、福岡県の果樹栽培が盛んな地域(田主丸・浮羽・朝倉)を巡るもの。ツアーの行程は、(1)田主丸で巨峰狩り→(2)巨峰ワイナリーのワインセラー見学及びフルーツワインの試飲→(3)浮羽道の駅で買い物→(4)キリンビアファームで焼肉食べ放題。

一番最初(7/6)に担当したお客さんは、台湾の夫婦と大学生の娘。バスに乗り込むなり奥さんが聞いてくる。「今日は何のフルーツを採るの?」。実はこのツアー、年間を通してあるので、時期によって採るフルーツが変わるのだ。だから、お客さんはツアーを申し込んだ時点では、何のフルーツを狩るのか分からない。私が「葡萄です」と答えると、彼女はガッカリした様子だった。

「今、スーパーで桃が売られているのに、なぜ桃ではないの?」。私にとってもこのツアーは初めて。だから、採るフルーツの種類がどのようにして決まるかは、当時知らなかった。とは言うものの、まさかガイドが「桃でない理由を知りません」とも言えない。仕方なく「今回は巨峰狩りと決まっているのです。でも、巨峰狩りも悪くないですよ。なぜなら、ここ田主丸は巨峰発祥の地なのですから。発祥の地での巨峰狩りは、良い思い出になると思いますよ」とごまかしておいた。一応、その線で押し通したが、現在台湾でも巨峰が大量に栽培されているので、あまり説得力がない。それに、マンゴーやパパイヤが豊富に採れるフルーツ王国・台湾でも、桃は意外に小さくて硬いのだ。彼女が桃狩りに執着する訳はよく分かる。こうなれば、話題を変え、別のことで楽しんでもらうしかない…。

2回目(7/10)のお客さんは香港人の親族5人。その中の1人である中年女性も聞いてきた。「今日のフルーツは何ですか?」そして葡萄と聞くとやはり同様の反応を示した。彼女いわく「桃って、何かとても神聖な果物なのよ」。あとで知ったが、香港も台湾同様、南国のフルーツは安いが、日本産の果物は高いそうだ。桃1個が日本円で千円もするという。どうりでこだわるはずだ。

2回連続でお客さんから桃をせがまれたのだから、私もちょっと桃について調べてみることにした。実際、私自身も桃狩りをしてみたい。そこで、福岡県内で桃狩りができる所を探してみると、2カ所あった。が、どちらも桃狩りができる期間が非常に短く、約10日間。しかもその年は異常気象で、桃の実が早くから落ちだし、さらに短くなっていた。でも、私は現地に居る。期間が短くても、何とか時間をやりくりして行くぞ!とばかり、雨の降る中、下見を決行。そこで写真を撮ってきた。

3回目(7/28)のお客さんはマカオ人。母親2人とそれぞれの息子2人のグループだった。母親の1人から、また例の質問が出た。そしてその後の反応も全く同じ。「う〜ん、マカオ人よ、お前もか!?」。私は心の中でつぶやいた。でも、今度は私も行動を起こしており、証拠写真も撮っていたので強い。私は自分が採った桃の写真を見せながら、「桃がいかにデリケートな果物で、採れる期間がいかに短いか」を滔々(とうとう)と語った。それでも、彼女は桃に対して未練たっぷりな様子だった。

4回目(7/31)のお客さんは、香港からの30代女性2人組。この時すでに桃の時期が終わりかけていた。だから、さすがに「是非、桃狩りを!」とは言ってこなかった。でも、今までで相当懲りていた私は、良いことを思いついた。それは、行程の3番目「浮羽道の駅」で、贈答用の立派な桃が売っている場所に連れて行く事だった。案の定、2人は大きな桃に目を輝かせ、12個入りの箱を何と1人2箱も買った。聞いてみると、生のフルーツは普通、外国へ持ち出せないのだけれど、香港だけは例外的に可能なのだそうだ。

確かに日本の桃は、甘くて柔らかくて水分たっぷり。中華系の人達に人気なのはよく分かる。それにしても、桃にこだわるのは女性が多い。どうしてなのだろう? 香港の女性が言った「桃は神聖な果物」という所にヒントがあるのではないか?

中国の古典小説「西遊記」の最初に、西王母の大切にしていた桃園の桃を、孫悟空が盗み食いする場面がある。西王母とは非常に位の高い女神だ。彼女がなぜ桃を大切にしていたかというと、その桃は6000年に1度しか実らない仙桃で、それを食べると寿命が延び、歳をとらなくなるからだ。「歳をとらない」つまり今風に言えばアンチエイジング。なるほど、これは女性に受ける!中華系の女性はきっと、桃にアンチエイジングのイメージを重ね合わせているのだろう。

■著者プロフィール:小林 晶子

外国語大学で中国語を専攻。結婚後、夫の転勤で台湾へ。その地で出産を経験。その時受けたカルチャーショックが原動力となり執筆を開始。その後、中国大連へ転勤。合計7年過ごす。3年前よりガイド資格を取り、日本を訪れる中国人・香港人・台湾人・華僑のガイドとなる。

■筆者プロフィール:小林 晶子

外国語大学で中国語を専攻。結婚後、夫の転勤で台湾へ。その地で出産を経験。その時受けたカルチャーショックが原動力となり執筆を開始。その後、中国大連へ転勤。合計7年過ごす。3年前よりガイド資格を取り、日本を訪れる中国人・香港人・台湾人・華僑のガイドとなる。著書に「華ちゃんママの台湾・中国生活日記」「趙先生の気功ワールド」「中国語の宝石箱」「三国志のことがマンガで3時間でわかる本」など。

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