<コラム>韓国メディアはなぜ、日本の「天皇」を「日王」と呼ぶのか

勝又 壽良    2016年8月4日(木) 11時20分

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144年経った今も、韓国メディアは「天皇」と呼ばずに「日王」と呼んでいる。資料写真。

韓国の新聞で最大発行部数を誇る「朝鮮日報」(7月25日付)が、「天皇と書くべきか、日王と書くべきか」というコラムを掲載した。韓国では、日本の「天皇」を「日王」と呼んでいる。一瞬、「あれ!」と思うほど違和感を覚えるのだ。これまで日本では、韓国や中国の人名については「日本語」の発音で通してきたが、最近は、「現地語」読みに切り替える例が増えている。それだけ、中韓への親近感を出そうという試みであろう。韓国では、前記のように天皇を「日王」と書いている。その理由を、前記のコラムは次のように説明している。

「私たち韓国人はいろいろな理由から日王と呼んでいる。皇帝と王の違いに境界線を設けるのは容易ではない。洋の東西では異なり、歴史的な文脈でも違う。単純に考えて、王や諸侯を率いる場合に皇帝と言うとしたら、日本の君主(原文ママ)はただの王だ。日本人が『天皇』と呼ぶからと言って、韓国人がその通りにする必要はない。日本の帝国主義により支配された35年間は韓国人にとって地獄だった。被害国が満足できるだけの反省もしていないのに、皇帝だなんて我々が思い及ぶはずもない」(筆者は、同紙の東京特派員金秀恵:キム・スへ氏)。

このコラムによれば、過去の日韓併合への恨みを晴らすべく、わざわざ「天皇」と呼ばないと説明している。実は、この「天皇」という表記を拒否するのは、明治維新当時から変わらない「日本蔑視」に基づく。日本が開国に伴う国書を当時の李朝に提出した。李朝は受取を拒否したのだ。理由は、日本が「皇上」と「奉勅」の文字を用いたことにある。皇帝とは、「中国皇帝」以外に存在せず、日本は傲慢であるという意味で受取を拒絶したもの。明治5年(1872年)、軍艦2隻を伴い再度の修好を求めたが拒否された。これが後の、日本の「征韓論」へと結びつく導火線になった。

あれから144年経った今も、韓国メディアは「天皇」と呼ばずに「日王」と呼んでいる。彼らの認識では、日本は儒教国でないため、「華夷秩序」(中国の皇帝を頂点とする階層的な国際関係を指す)からみて、「夷国」(野蛮国)に分類されている。その野蛮国の日本が、畏れ多くも中国皇帝並みの「天皇」を名乗ることは許されないということらしい。グローバル時代の現在なお、「中華帝国」意識は健在である。

■筆者プロフィール:勝又壽良

横浜市立大学商学部卒、経済学博士(中央大学)、元『週刊東洋経済』編集長、元東洋経済新報社編集局長、元東海大学教授、元東海大学教養学部長。経済記者30年、大学教員16年の経験を持つ。

■筆者プロフィール:勝又 壽良

1936年生まれ。横浜市立大学商学部卒 経済学博士(中央大学)元『週刊東洋経済』編集長、元東洋経済新報社編集局長、元東海大学教授、元東海大学教養学部長。2010年5月から、アメブロで中国と韓国を主体に「勝又壽良の経済時評」を毎日更新。経済・外交などのメディア情報に基づきこれまでの経験を生かし執筆している。経済記者30年、大学教員16年で得た知見を生かして日々の内外情報と格闘している。どうぞ、ご支援を!

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